衡平の促進

更新日:2014/05/05

衡平の促進

性中立な職務評価による同一賃金 段階的ガイドブック

マリー・テレーズ・チチャ 著

林 弘子 訳

2014年5月 発行予定

定価 2,000円+税

ISBN 978-4-907600-01-3

サンプルページ(PDF)

・  序文

概要

「同一価値労働同一賃金」を実現するための段階的ガイドブック

このガイドブックは,主題である「同一価値労働同一賃金」を,曖昧さを避ける意味もあり,欧米で広く使われるようになってきたペイ・エクイティという用語を使用して解説しています.内容が異なる2 つの職務が同一価値であることを証明するためには,職務の価値を比較するなんらかの方法が必要となります.ILO は,ポイント(点数)とファクター(要素)に基づく分析的方法がペイ・エクイティの目的には最適な方法であると述べ,本ガイドブックはこの方法を基本としています.

日本では,厚生労働省が2013 年に「パートタイム労働者の納得度を高め能力発揮を促進するために――要素別点数法による職務評価の実施ガイドライン」を発表しました.しかし,これは「同一労働同一賃金原則」に基づくフルタイマーとパートタイマーの賃金格差是正のための職務分析・職務評価であり,性差別の視点は織り込まれていません.そのため厚生労働省の発表したガイドラインは,本ガイドブックが中心に据えている男女の職務が全く異なる場合の「同一価値労働同一賃金原則」に基づく性による賃金格差を是正するための職務評価とは次元を異にするものとなっています. 雇用における非正規化が進み,女性労働者の57.5%,男性労働者の22.1%(2013 年)が非正規雇用となっている日本の現状で,本ガイドブックは女性中心職務か男性中心職務かを決定する際に「フルタイムかパートタイムか,期間の定めのない契約か有期契約かにかかわらず,企業のすべての従業員を含むことが重要である」と述べており,これは注目すべき点であるといえます.

本ガイドブックが繰り返し指摘しているように,職務評価の性中立性を確保することは,それほど簡単なことではありません.職務評価は差別を正当化するリスクも有していることに,注意する必要があります.この点に留意して,本ガイドブックが活用され,職務が異なる男女の賃金格差を是正する促進剤となることが期待されます.

目次

訳者前書き

序文

第1章 ガイドブックの構成と目的

第2章 ペイ・エクイティ委員会

第3章 比較対象職務の選択

第4章 職務評価方法

第5章 評価されるべき職務に関するデータの収集

第6章 アンケート結果の分析

第7章 職務の価値の決定

第8章 同一価値の職務の賃金格差の査定と賃金調整

文献

表一覧

用語解説

事項索引

著者紹介

マリー・テレーズ・チチャ(Marie-Thérèse Chicha)

カナダのモントリオール大学の労使関係スクール教授、経済学博士。国際的に知られたペイ・エクイティの専門家であり、実践家である。モントリオール民族学研究センター(CETUM) 研究員。1995 年には、ケベック州政府の要請でペイ・エクイティ立法化のための諮問委員会の議長を務めた。ILO の平等政策の専門家として活動し、2007 年にはトリノにあるILO の国際トレーニングセンターの客員教授を務めた。平等政策の専門家として様々な組織や政府(アメリカ、イギリス、フランス、デンマーク、ベルギー、スゥエーデン、モロッコ、ポルトガル等)に招聘されている。移民の雇用、ペイ・エクイティ、人事管理に関連した問題についてコンサルタントを務めるとともに広範な執筆活動を行っている。本書に先立ち、2006 年には、ILO から『ペイ・エクイティ促進の比較的分析―モデルとインパクト』(AComparative Analysis of Promoting Pay Equity : models and impacts) を出版。
最近の著作に、Charest É, Chicha M.-T. et Singh P.(2013)「ケベック州とインドにおけるアファーマティブ・アクション:成果の評価と予期しない結果」Diversité canadienne/Canadian Diversity10 (1):114-119 (RSC) ,Chicha M.-T.(2013)「ケベック州における雇用差別」Relations(763): 20-21、ChichaM.-T. et  Charest É.(2013)「 ケベック州と平等プログラムへのアクセス:履行されなかった公約」CETUM http://www.ceetum.umontre…3/chicha-charest-2013.pdf など多数。

訳者紹介

林 弘子(はやし ひろこ)

1966 年九州大学法学部卒業、1968 年九州大学法学部法学研究科修士課程修了、1970 年米チュレーン大学ロースクール卒業LLM(Master of Laws)、1976 年米イエール大学ロースクール(フルブライト研究員)、1982 年米コーネル大学労使関係スクール(ACLS 研究員)、1998 年米ニューヨーク大学ロースクール・コロンビア大学ロースクール(フルブライト研究員)、2003 年弁護士登録(福岡県弁護士会)、2005 年米ハワイ大学ロースクール客員教授(「日本におけるジェンダーと法」担当)。19791985 年熊本商科大学(現・熊本学園大学)教授、1985 – 2013 年福岡大学法学部・同大学院法学研究科教授(労働法担当)。2013 年4 月から公立大学法人宮崎公立大学学長。

最近の著作に、『労働法(第2 版)』(法律文化社・2014 年)、「ひとり親世帯と社会保障」新・社会保障法講座・第3 巻『ナショナルミニマムの再構築』(法律文化社・2012 年)、「男女同一賃金とジェンダー」講座ジェンダーと法・第2 巻『固定された性役割からの解放』(日本加除出版・2012 年)、「同一労働同一賃金と同一価値労働同一賃金」(『ジェンダーと法』NO.8・2011 年)、「労基法四条改正と同一価値労働同一賃金原則―職務評価制度の導入をめぐる問題」佐藤進先生追悼論文集『社会保障法・福祉と労働法の新展開』(信山社・2010 年)、「労基法四条と『男女同一賃金の原則』をめぐる法的問題―同一労働同一賃金と同一価値労働同一賃金原則」安西愈先生古稀記念論文集『経営と労働法務の理論と実務』(中央経済社・2009 年)、「日本におけるワーク・ライフ・バランス推進上の課題」(『世界の労働』58 巻6 号・2008 年)など。


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