世界労働レポート2012 より良い経済のためのより良い仕事

更新日:2012/08/31

世界労働レポート2012

より良い経済のためのより良い仕事

ILO(国際労働機関)/IILS(国際労働問題研究所)著

田村 勝省 訳

2012年8月 発行

定価 2,500円

ISBN 978-4-903532-86-8

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・  序文、目次

概要

本書は,最近の労働市場と社会の傾向に関する包括的な分析を示し,更に社会不安のリスクの評価,この先の5年間における雇用の予測を提示している.本レポートでは雇用は緩やかに回復し始めているものの,仕事の質が悪化しつつあり,不公平感が高まっていることが強調されている.加えて,政府に対しては支出抑制の圧力があるため,政策では雇用創出を押し上げるための構造改革に焦点が当てられている.しかし,仮に政策手段が慎重に設計されていないとすれば,それは雇用状況の悪化と更なる不公平感をもたらし,経済と社会の両方にとって永続的な悪影響を及ぼす懸念がある.

世界労働レポート2012は,以下のような問題を考察している:

・ 遅々とした回復は,所得の減少や貧困の深刻化,不平等の拡大などを含む社会状況をどの程度悪化させているのか?

・ 各国は財政再建をあまりに真剣に,かつ性急にやりすぎていないだろうか? 中期的に財政目標を達成すると同時に経済回復を支援するにはどうすべきか?

・ 最近の労働市場改革からは何が期待できるだろうか?

・ 経済と雇用の両方について永続的な回復が確保できるようにするために,どのようにしたら投資を押し上げることができるだろうか?

・ 雇用を中心とする公平性を高める政策を実施するに際して,何が障害となってきたのだろうか? 社会不安のリスクが高まっているにもかかわらず,なぜ「平常通り」というシナリオが重要性を維持しているのだろうか?

本レポートは慎重に設計された政策アプローチを要請している.それは良質な仕事の創出に緊急に取り組む必要があるということを考慮に入れると同時に,より生産的で公平な経済と労働市場を構築するための下地となるものでなければならない.

目次

序文

1.世界的経済危機が雇用,仕事の質,及び社会に対してもたらした意義

主な研究成果

はじめに

A.雇用のトレンド

B.仕事の質

C.貧困や所得不平等に対する危機のインパクト

D.より良い経済のためのより良い仕事

補遺A

補遺B

補遺C

参考文献

2.雇用保護と労使関係:最近のトレンドと労働市場へのインパクト

主な研究成果

はじめに

A.労働市場制度:文献と最近のトレンドにかかわる概観

B.雇用保護規制や団体交渉にかかわる変更が労働市場に及ぼす効果を評価する

C.政策対応

補遺A

補遺B

参考文献

3.財政再建と雇用増加

主な研究成果

はじめに

A.債務動態と進展中の財政再建に向けた取り組み

B.財政再建の雇用効果:緊縮策と社会的責任アプローチ

補遺A

参考文献

4.持続可能な回復に投資する

主な研究成果

はじめに

A.世界の投資と雇用のトレンド

B.投資の動因

C.政策対応

補遺A

参考文献

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著者紹介

国際労働機関(ILO)/ 国際労働問題研究所(IILS) 

 国際労働機関(ILO : International Labor Organization)は1919 年に,社会正義の促進,そして,世界的な平和とその持続を目的として設立された.創立50 周年にあたる1969 年にはノーベル平和賞を受賞している.この機関の事務部門,事業本部,調査研究センター及び出版部門の本拠は,ジュネーブにある国際労働事務局である.その管理運営は,40 以上の国にある地域総局及び現地事務所に分散されている.国際労働機関は国連に加盟する機関では独特の三者(政府,使用者,労働者)構成を採用しており,理事会にはこの三者の代表も含まれている.これは,政策策定や計画立案時には,経済を動かす社会的パートナーである労使代表も政府と等しく発言する権利をもっている,という理念に基づくものである.上記の三つの団体は,ILO が後援する各地域での活動や会合に参加するだけでなく,国際労働総会にも出席している.この国際労働総会は,毎年開催されており,世界の労働問題,社会問題を討議する国際フォーラムでもある.

 国際労働機関は長い年月にわたり,労働組合,労働者,社会政策,雇用条件,社会保障,企業間の交渉や労働行政などに関する問題に,参加各国の様々な条件を考慮しつつ取り組んできている.

 国際労働機関は,40 カ国以上からなる地域総局や労使団体間の情報交換を通して,助言や技術的な支援を行っている.この支援活動には,労働者の権利と企業間交渉に対する助言,雇用の促進,小規模な企業の発展を目的とした教育,計画の策定などが含まれる.またさらに,社会保証や労働条件,労働環境の安全性に関するアドバイス,労働に関する統計の比較と公表,労働者教育も行っている.

訳者紹介

田村 勝省(たむら かつよし)

1949 年生まれ.東京外国語大学および東京都立大学卒業.旧東京銀行で調査部,
ロンドン支店,ニューヨーク支店などを経て,現在は関東学園大学教授,翻訳家.
訳書
『アメリカ大恐慌(上下)』(NTT 出版,2008 年)
『アメリカ連邦準備制度の内幕』(一灯舎,2010 年)
『シュンペーター伝 革新による経済発展の預言者の生涯』(一灯舎,2010 年)
『ユーロ  統一通貨誕生への道のり、その歴史的・政治的背景と展望』(一灯舎,2011 年)
『世界開発報告2011 紛争,安全保障と開発 』(一灯舎,2012 年)
『世界雇用情勢2012 雇用危機の深刻化を予防 』(一灯舎,2012 年)
『ユーロの崩壊 ヨーロッパの金融失敗からの脱出ルート』(一灯舎,2012 年)