世界労働レポート 2011 雇用のために市場を機能させる
更新日:2012/01/31
サンプルページ(PDF)
・ 序文,目次
概要
本レポートは各国の労働市場を巡る社会不安と中長期トレンドについて包括的な分析を提示している。また、現在の対策は金融市場への短期的な対応を重視しすぎており、そのため雇用は二番底に陥るリスクがあることを強調している。それよりも雇用と実物投資に焦点を当てた対策を採用すれば景気回復の展望を明るくすると同時に、金融危機の根本原因にも取り組むことができるとしている。
本レポートではつぎのような諸問題が検討されている
・各国経済の鈍化が雇用に与えるインパクトとその将来の展望の分析。
・増大する社会不安は危機の重荷が公平に分担されていないという受け止め方についての根拠。
・財政負担に頼らず実物経済への投資や賃金と生産性の密接な関係を促進し、雇用の二番底のリスクを回避できる政策が各国でどのように実施できるか。
・農産物への金融投機を排除し農民が農業に投資し、それによって食料危機を緩和し、途上国における雇用の機会をつくるための民間部門からのインセンテイブをどう高めるか。
目次
序文
1. 市場の混乱,雇用と社会不安:トレンドと展望
主な研究成果
はじめに
A.労働市場情勢は弱体化している
B.雇用の展望:雇用創出が不十分
C.社会的な福祉と不安に関する最近のトレンド
D.雇用のために市場を機能させる:前進する方法
補遺A 得水準別の国分類
補遺B 雇用に対する金融危機のインパクト:実証分析
補遺C 社会不安の決定要因:実証分析
参考文献
2. 利益を投資と雇用のために機能させる
主な研究成果
はじめに
A.所得分配と生産的投資のトレンド
B.非金融企業の利益と生産的投資:その断絶増大の原因
C.政策の検討
補遺A 配当―投資―雇用の力学:実証分析
参考文献
3. 所得に占める労働のシェア:決定要因と金融危機からの脱却への潜在的な寄与
主な研究成果
はじめに
A.賃金シェア:トレンドと意義
B.賃金シェア低下の決定要因
C.政策の検討
補遺A 賃金シェアの定義
補遺B データの出所
補遺C 回帰分析
参考文献
4. より良い雇用環境の牽引車として食料の安全保障に投資する
主な研究成果
はじめに
A.食料価格の高騰がマクロ経済,雇用,所得に及ぼす影響
B.食料価格の上昇に寄与している要因
C.政策上の挑戦と前進する方法
参考文献
5. 雇用回復と公平性を改善するための税制改革
主な研究成果
はじめに
A.税構造の推移
B.税負担と雇用
C.課税ベースを広げる:主要な選択肢
補遺A 各種税の定義
参考文献
6. 緊縮財政下における有効な雇用政策
主な研究成果
はじめに
A.財政の挑戦
B.緊縮財政下における雇用政策
C.政策的配慮
補遺2モデルのメカニズム
参考文献
国際労働研究所の最近の出版物
著者紹介
国際労働機関(ILO:The International Labour Organization)
国際労働機関(ILO : International Labor Organization)は1919 年に,社会正義の促進,そして,世界的な平和とその持続を目的として設立された.創立50 周年にあたる1969 年にはノーベル平和賞を受賞している.この機関の事務部門,事業本部,調査研究センター及び出版部門の本拠は,ジュネーブにある国際労働事務局である.その管理運営は,40 以上の国にある地域総局及び現地事務所に分散されている.国際労働機関は国連に加盟する機関では独特の三者(政府,使用者,労働者)構成を採用しており,理事会にはこの三者の代表も含まれている.これは,政策策定や計画立案時には,経済を動かす社会的パートナーである労使代表も政府と等しく発言する権利をもっている,という理念に基づくものである.上記の三つの団体は,ILO が後援する各地域での活動や会合に参加するだけでなく,国際労働総会にも出席している.この国際労働総会は,毎年開催されており,世界の労働問題,社会問題を討議する国際フォーラムでもある.
国際労働機関は長い年月にわたり,労働組合,労働者,社会政策,雇用条件,社会保障,企業間の交渉や労働行政などに関する問題に,参加各国の様々な条件を考慮しつつ取り組んできている.
国際労働機関は,40 カ国以上からなる地域総局や労使団体間の情報交換を通して,助言や技術的な支援を行っている.この支援活動には,労働者の権利と企業間交渉に対する助言,雇用の促進,小規模な企業の発展を目的とした教育,計画の策定などが含まれる.またさらに,社会保証や労働条件,労働環境の安全性に関するアドバイス,労働に関する統計の比較と公表,労働者教育も行っている.
訳者紹介
田村 勝省(たむら かつよし)
1949 年生まれ.東京外国語大学および東京都立大学卒業.旧東京銀行で調査部,ロンドン支店,ニューヨーク支店などを経て,現在は関東学園大学教授,翻訳家.
訳書
『アメリカ大恐慌(上下)』(NTT 出版,2008 年)
『ウォール街の崩壊の裏で何が起こっていたのか? 』(一灯舎,2009 年)
『世界開発報告2010 開発と気候変動 』[共訳](一灯舎,2010 年)
『アメリカ連邦準備制度の内幕』(一灯舎,2010 年)
『シュンペーター伝 革新による経済発展の預言者の生涯』(一灯舎,2010 年)
『ユーロ 統一通貨誕生への道のり、その歴史的・政治的背景と展望』(一灯舎,2011 年)