世界開発報告2011 紛争,安全保障と開発

更新日:2012/02/28

世界開発報告2011

紛争,安全保障と開発

世界銀行 編著

田村勝省 訳

2012年2月 発行

定価 4,200円

ISBN 978-4-903532-77-6

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・  目次,概観

概要

少なくとも15億人が,依然として現在または過去の内戦や暴動、暴力的犯罪から影響を受けている。21 世紀の暴力は,中東・北アフリカで再び目にしているように,国家間紛争のパターンやそれに対処する方法という点で言えば20世紀のものとは異なっている.低所得,貧困,失業,食料価格の乱高下がもたらす所得ショック,急速な都市化,グループ間の不平等などすべてが暴力のリスクを高める.麻薬違法取引や不法な金融フローなど対外ストレスもこのようなリスクを大きくすることがある.

この『世界開発報告2011』では,学問分野をまたがって世界中の経験から抽出した経験を検討することによって,どのようにして紛争や脆弱性を超越して前進し開発を確保したらいいかに関して,若干のアイディアと実際的な勧告を提示している.また,移行に成功した国々で市民と国家が信認を再構築するために有用であった一連の政策を紹介している。そして,鍵となるメッセージとして,次のようなものを挙げており,それらは地域機関や国際機関に加えて,すべての諸国にとって重要である.

・制度的な正当性が安定性にとっての鍵となる.制度が不十分な国では,最も早い段階で,初歩的な制度を変更する前でも,基本的な集団行動に対する世論の信頼を回復する必要がある.早期に迅速で具体的な成果を生み出すことが決定的に重要である.

・市民の安全と,正義,及び雇用に対する投資が暴力の削減にとっては必要不可欠である.特に民間部門を通じて雇用を創出する必要がある.政治的な連合,治安・司法の改革,経済的なエンパワメントなどに,女性を関与させることも重要である.

・21世紀の紛争や暴力に有効に立ち向かうためには制度の変化が必要である.国際機関や海外のパートナーは手続きを適合させて,機敏さとスピード,長期的な視野,耐久力をもって対応できなければならない.さらに援助は統合・調整される必要がある.

・多層的なアプローチを採用する必要がある.各国レベルで対処できる問題もあるが,地域レベルで取り組む必要のある問題もある.また,違法な不正取引の阻止,食料価格の乱高下や金融の不安定さがもたらすストレスを削減ためには,世界レベルでの措置が必要である.

・世界の情勢は変化しつつあるということを認識する必要がある.つまり,地域的な機関や中所得国がより大きな役割を果たしつつあり,これは南々交流や南北交流,さらには中所得国の最近の移行経験にもっと関心を払わなければならないということを意味する。

暴力や紛争は繰り返し起きていることを考慮すると,解決後の再建だけでなく,紛争や暴力の防止や回避に対する継続的な支援も重要である.内戦のコストは平均的な途上国にとって約30 年間分のGDP成長に相当し,危機が長引いている諸国は貧困の克服という点で20%ポイント以上の後れを取る.社会が暴力の新たな勃発やその連鎖の反復を免れるのに助けになる有効な方法を発見することが,世界の治安と世界の開発にとって決定的に重要である.

目次

序文

謝辞

用語解説

方法論注

略語およびデータ注

概観

前文

パート1:暴力の反復的な連鎖がもたらす挑戦課題

21 世紀の紛争と暴力は20 世紀の型には当てはまらない開発問題である

紛争の悪循環:安全と正義,及び雇用へのストレスが脆弱な制度と一緒になった場合

パート2:各国レベルで暴力の連鎖を打破するためのロードマップ

信頼を回復し,市民に安全と正義,及び雇用を提供する制度に転換する

国家という主体のための実際的な政策とプログラムへの手段

パート3:暴力のリスクを削減する:国際的な政策の方向

軌道1:市民の安全と正義,及び雇用を通じて暴力防止のための特別援助を提供する

軌道2:国際機関における手続きやリスクと成果の管理を転換する

軌道3:脆弱な国家に対する外からのストレスを削減すべく地域的・世界的に行動する

軌道4:国際政策と援助にかかわる状況の変化を反映させて,低・中・高所得国や

世界的及び地域的な機関からの支援を動員する

世界開発報告の枠組みと構成

PART I 挑戦

1 反復的暴力が開発を脅かす

国家間の戦争や内戦は1990 年代初めにピークを打ってから減少している

現代の暴力はさまざまな形態を取りながら反復的・連鎖的に押し寄せてくる

暴力が開発に及ぼす影響は甚大である

反復的な暴力は共通の挑戦課題である

2 暴力に対する脆弱性

多種多様なストレスが暴力のリスクを高めている

制度的な正当性の弱さと暴力の悪循環

PART II 国家的・国際的な対応からの教訓

3 暴力から強靭性へ:信頼を回復し制度を転換する

制度の転換はなぜそれほど困難なのか

暴力を脱して強靭性を発展させる

あまりに多くを,あまりに性急に期待するな

多種多様な状況への適合

4 信頼を回復する:瀬戸際から決別する

各国の改革者から教訓を引き出す

十分に包容的な連繋

早期成果を実現する

5 市民に安全と正義,及び雇用を提供するために制度を転換する

制度転換のペース設定と順序

市民の安全

司法

雇用

体系的に,しかし漸進的にどうすべきか

連続的なプロセスとしての制度的転換

6 信頼醸成と制度転換に対する国際支援

外部支援の約束と危険性

国際システムの変遷

信頼を醸成する

制度的な転換を支援する

二重の説明責任と行動のリスク管理

国際的な関与の教訓

7 外部からのストレスを緩和するための国際的措置

治安面での外部ストレス

外部からの経済ストレス

資源のストレス

グローバルと国家の中間で:地域的なストレスと地域的な支援

PART III 実際的な選択肢と勧告

8 各国別の実際的な指針と選択肢

調理法のレシピではなく,原則と選択肢

持続的な暴力防止と復興のための基本原則と各国固有の枠組み

信頼醸成に対する実際的なアプローチ

早期の成果を制度の転換に連動させるプログラム・アプローチ

外部からの要因:外部からのストレスを削減し外部の支援を動員する

9 国際支援の新しい方向

軌道1:市民の安全と正義及び雇用に投資することによって暴力の反復的な連鎖を防止する

軌道2:国際機関の内部システムを改革する

軌道3:外部からのストレスを削減する:新しい地域的・世界的な措置

軌道4:低・中・高所得国や世界的及び地域的な機関からの支援を動員する

継続的な世界学習プラットフォーム

参考文献についての注

参考文献

主要指標2011

主要開発指標

著者紹介

世界銀行(The World Bank)

訳者紹介

田村 勝省(たむら かつよし)

1949 年生まれ.東京外国語大学および東京都立大学卒業.旧東京銀行で調査部,ロンドン支店,ニューヨーク支店などを経て,現在は関東学園大学教授,翻訳家.

主な訳書
『アメリカ大恐慌(上下)』(NTT 出版,2008 年)
『世界給与・賃金レポート――最低賃金の国際比較 組合等の団体交渉などの効果、経済に与える影響など』(一灯舎,2010 年)
『シュンペーター伝 革新による経済発展の預言者の生涯』(同,2010 年)
『ユーロ 統一通貨誕生への道のり、その歴史的・政治的背景と展望』(同,2011 年)
『世界労働レポート 2011 ――雇用のために市場を機能させる』(同,2012 年)


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