更新日:2012/02/28
・ 目次,概観
少なくとも15億人が,依然として現在または過去の内戦や暴動、暴力的犯罪から影響を受けている。21 世紀の暴力は,中東・北アフリカで再び目にしているように,国家間紛争のパターンやそれに対処する方法という点で言えば20世紀のものとは異なっている.低所得,貧困,失業,食料価格の乱高下がもたらす所得ショック,急速な都市化,グループ間の不平等などすべてが暴力のリスクを高める.麻薬違法取引や不法な金融フローなど対外ストレスもこのようなリスクを大きくすることがある.
この『世界開発報告2011』では,学問分野をまたがって世界中の経験から抽出した経験を検討することによって,どのようにして紛争や脆弱性を超越して前進し開発を確保したらいいかに関して,若干のアイディアと実際的な勧告を提示している.また,移行に成功した国々で市民と国家が信認を再構築するために有用であった一連の政策を紹介している。そして,鍵となるメッセージとして,次のようなものを挙げており,それらは地域機関や国際機関に加えて,すべての諸国にとって重要である.
・制度的な正当性が安定性にとっての鍵となる.制度が不十分な国では,最も早い段階で,初歩的な制度を変更する前でも,基本的な集団行動に対する世論の信頼を回復する必要がある.早期に迅速で具体的な成果を生み出すことが決定的に重要である.
・市民の安全と,正義,及び雇用に対する投資が暴力の削減にとっては必要不可欠である.特に民間部門を通じて雇用を創出する必要がある.政治的な連合,治安・司法の改革,経済的なエンパワメントなどに,女性を関与させることも重要である.
・21世紀の紛争や暴力に有効に立ち向かうためには制度の変化が必要である.国際機関や海外のパートナーは手続きを適合させて,機敏さとスピード,長期的な視野,耐久力をもって対応できなければならない.さらに援助は統合・調整される必要がある.
・多層的なアプローチを採用する必要がある.各国レベルで対処できる問題もあるが,地域レベルで取り組む必要のある問題もある.また,違法な不正取引の阻止,食料価格の乱高下や金融の不安定さがもたらすストレスを削減ためには,世界レベルでの措置が必要である.
・世界の情勢は変化しつつあるということを認識する必要がある.つまり,地域的な機関や中所得国がより大きな役割を果たしつつあり,これは南々交流や南北交流,さらには中所得国の最近の移行経験にもっと関心を払わなければならないということを意味する。
暴力や紛争は繰り返し起きていることを考慮すると,解決後の再建だけでなく,紛争や暴力の防止や回避に対する継続的な支援も重要である.内戦のコストは平均的な途上国にとって約30 年間分のGDP成長に相当し,危機が長引いている諸国は貧困の克服という点で20%ポイント以上の後れを取る.社会が暴力の新たな勃発やその連鎖の反復を免れるのに助けになる有効な方法を発見することが,世界の治安と世界の開発にとって決定的に重要である.