成長なき繁栄 地球生態系内での持続的繁栄のために

更新日:2012/02/28

成長なき繁栄

地球生態系内での持続的繁栄のために

ティム・ジャクソン 著

田沢 恭子 訳

2012年2月 発行

定価 2,200円

ISBN 978-4-903532-76-9

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・  序文,目次

概要

今世紀末までに我々の子や孫は,きびしい気候や資源の枯渇,動植物の生息地の破壊,種の減少,食料不足,人口の大量移住に直面し,ほぼ確実に戦争が各地で起きることを経験するであろう.これを防ぐ対策は何か?

人口が90 億以上になる世界を前にして,不況対策として経済成長を高め,そのために個人消費を増やすことが必要だというGDP 成長神話が万能薬とされている.これでよいのだろうか? 財政と生態系から成長なき繁栄は不可欠なものとなってきた.

本書はGDP ではカバーされない私たちの社会生活の質的向上について深く分析し,従来のマクロ経済学から新しい生態系マクロ経済学を提唱する.そこでは高い労働生産性を追求することではなく,低炭素で労働集約的構造にすすむ.

私たちが望むべき良い生活は,お互いが愛情を与え会い,仲間から尊敬され,社会に貢献し,コミュニテイーへの帰属意識と信頼を抱くようなものであり,大切なのは,そういう社会を創造し,そこに各人が確かな居場所を見いだすことである.

日本は他の国に比べて本書の提唱する内容に近い位置にあると思われ,読者は共感を覚えるであろう.それは伝統的な互助の精神,自然への関心の深さ,低い所得格差,高い技術革新能力などによる.現在日本はあらゆる意味で戦後の大きな転換期にあり,本書の示唆するところは新しい日本の創造において大いに参考になるであろう.


脱字のお知らせ:本書231ページ右から5行目に脱字がありました。お詫び申し上げます。「~わけではない。」の後に、「政府の役割は」を補ってください。増刷の際には修正いたします。

目次

謝辞

略語一覧

序文

ハーマン・E・デイリーによる序文

ビル・マッキベンによる序文

メアリー・ロビンソンによる序文

パヴァン・スクデフによる序文

第1章 失われた繁栄

成長としての繁栄

限界の問題

限界を超えて

第2章 無責任の時代犯人を探して

債務の迷宮

内なる敵

生態系への債務

第3章 繁栄の再定義富裕としての繁栄

効用としての繁栄

よく暮らすための潜在能力としての繁栄

潜在能力に対する制限

第4章 成長のジレンマ繁栄の条件としての物質的富裕

所得と基本的権利

所得の増大と経済の安定

第5章 デカップリングの神話相対的デカップリング

絶対的デカップリング

成長の算術

厳しい選択

第6章 消費主義の「鉄の牢獄」資本主義の諸構造

社会の論理

新規性と不安

第7章 ケインズ主義と「グリーン・ニューディール」成長を刺激するための選択肢

グリーン・ニューディール

雇用創出の戦略

「グリーン」な回復の可能性

回復への資金調達

回復の先へ

第8章 生態系マクロ経済学マクロ経済学の基礎

「成長の原動力」を変える

ワークシェアリング

エコ投資

生態系マクロ経済学の基盤

第9章 限界内での繁栄不面目でない生活

代替的な享楽主義

構造改革の役割

第10章 繁栄のためのガバナンス政府の役割

利己主義と利他主義

さまざまな資本主義

矛盾した国家

第11章 持続可能な経済への移行限界を確立する

経済モデルを修正する

社会の論理を変える

ユートピアではない

第12章 持続的な繁栄繁栄のビジョン

舞踏会のシンデレラ?

資本主義の終焉?

そろそろ

付録1 SDC「繁栄の再定義」プロジェクト

付録2 生態系マクロ経済学に向けてモデル開発

あとがき

参考文献

原注

索引

著者紹介

ティム・ジャクソン(Tim Jackson)

本書執筆時はイギリス政府の独立諮問機関「持続可能な発展委員会」の経済委員.現在はサリー大学にて「持続可能な発展」の教授,学部横断的な学際的組織「ライフスタイル・価値観・環境に関する研究グループ」(RESOLVE)の統括者を務める.学術研究のほかに脚本家としても受賞歴があり,BBC で多数のラジオ台本を書いている.

訳者紹介

田沢恭子(たざわ・きょうこ)

翻訳家.お茶の水女子大学大学院人文科学研究科修了.訳書に『ニュー・エコノミクス』,『ヘッジファンドマネージャーのウォール街の日々』(以上一灯舎),『不可能,不確定,不完全』,『ウェットウェア』(以上共訳,早川書房)などがある.


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