更新日:2012/02/28
・ 序文,目次
今世紀末までに我々の子や孫は,きびしい気候や資源の枯渇,動植物の生息地の破壊,種の減少,食料不足,人口の大量移住に直面し,ほぼ確実に戦争が各地で起きることを経験するであろう.これを防ぐ対策は何か?
人口が90 億以上になる世界を前にして,不況対策として経済成長を高め,そのために個人消費を増やすことが必要だというGDP 成長神話が万能薬とされている.これでよいのだろうか? 財政と生態系から成長なき繁栄は不可欠なものとなってきた.
本書はGDP ではカバーされない私たちの社会生活の質的向上について深く分析し,従来のマクロ経済学から新しい生態系マクロ経済学を提唱する.そこでは高い労働生産性を追求することではなく,低炭素で労働集約的構造にすすむ.
私たちが望むべき良い生活は,お互いが愛情を与え会い,仲間から尊敬され,社会に貢献し,コミュニテイーへの帰属意識と信頼を抱くようなものであり,大切なのは,そういう社会を創造し,そこに各人が確かな居場所を見いだすことである.
日本は他の国に比べて本書の提唱する内容に近い位置にあると思われ,読者は共感を覚えるであろう.それは伝統的な互助の精神,自然への関心の深さ,低い所得格差,高い技術革新能力などによる.現在日本はあらゆる意味で戦後の大きな転換期にあり,本書の示唆するところは新しい日本の創造において大いに参考になるであろう.
脱字のお知らせ:本書231ページ右から5行目に脱字がありました。お詫び申し上げます。「~わけではない。」の後に、「政府の役割は」を補ってください。増刷の際には修正いたします。
タグ: 経済学