世界労働レポート2009 世界に広がるジョブ危機の実情とその将来

更新日:2010/11/30

世界労働レポート2009

世界に広がるジョブ危機の実情とその将来

ILO(国際労働機関) 著

古川秀子 訳

2010年11月 発行

定価 1,800円

ISBN 978-4-903532-67-7

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・  論説,目次

概要

最近になって回復傾向がみられるとはいえ,2008 年10 月に勃発した危機は未だ終わってはいないのが実情である.従って,適切な措置が講じられなければ,失業は継続して増加し,多数の労働者や小規模起業者は所得の永続的な減少のために苦悩する.そして,その結果格差がますます広がることになる.ところが,危機の根本原因に取り組むような企てはほとんど何もなされていない.本書は,以下の諸点の現状と将来の方向を,多数の図表や事例を用いてわかり易く示している.

・ 現在の傾向を根拠に,雇用危機はいつ終わるのか.どのような政策を講じることにより,より早く,かつより広い回復を進めることができるのか.
・ 世界経済はこれまでのような通常のビジネスに戻ることはできるのだろうか.どのようにして金融システムが実体経済の持続性を弱めてしまったのか.そして,危機の背景にある行き過ぎた,非効率的な金融運用を変えるために,今まで何がなされてきたのだろうか.
・ より公正なグローバル化を達成する方法は何か.国際的な貿易協定は労働条項を含む社会的問題にどの程度まで配慮したらよいのか.
・ 気候変動との闘いを世界的に進めることで,それを雇用危機克服の機会にする方法はあるか.そしてこれをどう進めるべきか.

本報告書は,世界経済をより持続的でより公正にするために,ILO が最近採択したGlobal JobsPact(「グローバルジョブ協定」)の速やかな実施を求めている.

目次

論説

1.世界的な雇用危機:そのパターンと中期的なシナリオ

主たる調査結果

序論

A. 労働と社会に対する直接的影響

B. 長期の低就業状態と限りある社会保障のリスク

C. 今後の対応策

付録A. 経済危機が労働市場に及ぼした影響:過去の経験

付録B. 金融危機が雇用に及ぼす影響:実証的分析

参考文献

2.実体経済に有用な金融システム:政策にとっての課題

主たる調査結果

序論

A. 非金融部門に対する金融部門の成長

B. 非金融経済の金融化:その傾向と社会的影響

C. 金融化は企業や雇用にとって不安定要因となった.これをレバレッジド・バイ・アウトで検証する

結論

参考文献

3.バランスを取り戻すグローバル化:既存の国際貿易協定と開発金融政策における労働条項の役割

主たる調査結果

序論

A. 貿易協定における労働条項:現況と傾向

B. 国際開発金融

結論

参考文献

環境保護政策と雇用:二重の配当?

主たる調査結果

序論

A. 雇用問題:高炭素集約セクターにおける雇用の評価

B. 雇用の可能性:雇用に及ぼす環境保護政策の効果を予測する

結論

付録A. 高炭素集約セクターの規模を評価する

付録B. 環境保護政策の配分的効果について,精選された実証的結果

付録C. 9 カ国における環境保護政策の雇用効果を評価する:ベクトル自己回帰法

参考文献

国際労働問題研究所の出版物

著者紹介

ILO:The International Labour Organization( 国際労働機関)

http://www.ilo.org/

 国際労働機関(ILO : International Labor Organization)は1919 年に,社会正義の促進,そして,世界的な平和とその持続を目的として設立された.創立50 周年にあたる1969 年にはノーベル平和賞を受賞している.この機関の事務部門,事業本部,調査研究センター及び出版部門の本拠は,ジュネーブにある国際労働事務局である.その管理運営は,40 以上の国にある地域総局及び現地事務所に分散されている.国際労働機関は国連に加盟する機関では独特の三者(政府,使用者,労働者)構成を採用しており,理事会にはこの三者の代表も含まれている.これは,政策策定や計画立案時には,経済を動かす社会的パートナーである労使代表も政府と等しく発言する権利をもっている,という理念に基づくものである.上記の三つの団体は,ILO が後援する各地域での活動や会合に参加するだけでなく,国際労働総会にも出席している.この国際労働総会は,毎年開催されており,世界の労働問題,社会問題を討議する国際フォーラムでもある.
 国際労働機関は長い年月にわたり,労働組合,労働者,社会政策,雇用条件,社会保障,企業間の交渉や労働行政などに関する問題に,参加各国の様々な条件を考慮しつつ取り組んできている.
 国際労働機関は,40 カ国以上からなる地域総局や労使団体間の情報交換を通して,助言や技術的な支援を行っている.この支援活動には,労働者の権利と企業間交渉に対する助言,雇用の促進,小規模な企業の発展を目的とした教育,計画の策定などが含まれる.またさらに,社会保証や労働条件,労働環境の安全性に関するアドバイス,労働に関する統計の比較と公表,労働者教育も行っている.

訳者紹介

古川 秀子(ふるかわ ひでこ)

お茶の水女子大学文教育学部外国文学科(英語学専攻)卒業.
現在,小中学校にて,英語教育活動に従事.


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