ニュー・エコノミクス GDPや貨幣に代わる持続可能な国民福祉を指標にする新しい経済学
更新日:2010/06/30
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・ 目次,第1章(途中まで)
概要
本書は「ニュー・エコノミクス」について、一般向けに書かれた最初の経済学書である。従来の経済学は、効用や消費、需要と供給などのミクロ経済学、投資や、景気変動などのマクロ経済学が主流であった。それらは、貨幣やGDP を成功と豊かさの指標とするもので、21世紀に入ってからはこれらに疑問を抱かせる事態が沢山出現している。相次ぐバブルとその崩壊(ファンド操作のみでの利益追求)、先進各国における所得格差の拡大、容易に減らない若者の失業、経済からの政治の乖離と膨大な財政赤字、国や地方自治体の破産状態などである。
この本は、真の豊かさをあらゆる角度から評価し直して、その実現を追求する新しい経済学について書かれている。人の幸福や環境の持続可能性が真の富をはかる主要な指標となる。英国のラスキン(「生活無くして富無し」)、ベロック、チェスタートンやシューマッハらの道徳や知性の強い伝統に根ざしたものである。
著者のデイヴィッド・ボイルとアンドリュー・シムズの所属するニュー・エコノミクス財団は真の経済的幸福を探求するシンク・タンクである。そこが発表する“地球幸福度指数”によればバヌアツ、コスタリカがトップ、日本は140カ国中中間の75位。これでよいのか?
目次
謝辞
略語リスト
第一章 経済の問題
推奨図書
原注
第二章 富ではなく生活を――ニュー・エコノミクス小史
推奨図書
原注
第三章 尺度――なぜ、貧困に見える太平洋の島国が地球幸福度指数でトップになったのか?
中米の好成績
小さな島国の好成績
基本的な問題――貨幣で真の富は測れない
ニュー・エコノミクスによる打開策
推奨図書
原注
第四章 貨幣――なぜ、中国はイラク戦争の費用を負担したのか?
基本的な問題――金融システムがもはや目的を果たしていない
貨幣を組織する新しい方法
ニュー・エコノミクスによる打開策
推奨図書
原注
第五章 市場――なぜ、ロンドンの交通速度は常に時速一二マイルなのか?
基本的な問題――人間の動機に関する無理解
ニュー・エコノミクスによる打開策
推奨図書
原注
第六章 生活――なぜ、現代のイギリス人は中世の農民より働くのか?
基本的な問題――システムが貧困をもたらす
ニュー・エコノミクスによる打開策
推奨図書
原注
第七章 資源――なぜ、キューバの修理工は世界一なのか?
基本的な問題――われわれの経済は廃棄物を出すようにできている
廃棄物を原材料にする新しい方法
ニュー・エコノミクスによる打開策
推奨図書
原注
第八章 貿易――なぜ、イギリスは輸出するのと同数のチョコレートワッフルを輸入するのか?
基本的な問題――間違った相互依存は貧困につながる
ニュー・エコノミクスによる打開策
推奨図書
ウェブサイト
原注
第九章 コミュニティー――なぜ、ウォルマートが近くにあると投票率が下がるのか?
スーパーマーケットがもたらす問題
基本的な問題――効率と効果はイコールではない
ニュー・エコノミクスによる打開策
推奨図書
原注
第十章 債務――なぜ、マラウイの村人が
サービトンの株式仲買人の住宅ローンを負担しているのか?
基本的な問題――開発を妨げる障害
ニュー・エコノミクスによるアプローチ
推奨図書
原注
第十一章 未来
原注
付録A 恐慌の残骸から――ニュー・エコノミクスが提案する、よりよい経済の再建に向けた最初の二〇のステップ
付録B ニュー・エコノミクスのツールと手法
訳者あとがき
索引
著者紹介
デイヴィッド・ボイル(David Boyle)
nef(ニュー・エコノミクス財団)のフェロー.タイムバンク(時間預託制度)の創設で中心的役割を果たす.ライターおよびジャーナリストとして,FunnyMoney,The Tyranny of Numbers and Authenticity,The Little Money Book,The Money Changers,Blondel’s Song,The Sum of our Discontent などの著作がある.
アンドリュー・シムズ(Andrew Simms)
ライター,運動家.著書にEcological Debt: Global Warming and the Wealth of Nations,Do Good Lives Have to Cost the Earth? などがある.大手チェーン店による独占を批判するTescopoly の著者でもあり,「クローンタウン」(独自性に欠ける均質な町)という造語を生み出した.nef のポリシーディレクターを務め,気候変動・エネルギープログラムを統括している.
nef について
真の経済的幸福を促進し実現する独立系シンク・アンド・ドゥー・タンク(think-and-do tank).国際債務などの問題をG7およびG8サミットの議題に加えさせた「もうひとつの経済サミット(TOES)」のリーダーたちによって1986 年に設立される.経済・環境・社会問題において主流となっている考え方に異議を唱える画期的な解決策を推進することにより,生活の質の向上を目指す.外部と連携して活動し,人と地球を最優先に位置づける.厳密な分析および政策論議を現場の現実的な解決策(地域住民の助けを借りて策定・実施されることが多い)と結びつけている点に特徴がある.幸福の増大と環境的持続可能性への進展を評価する新しい方法の考案もおこなう.イギリス国内および世界のあらゆる社会領域――市民社会,政府,個人,企業,学界――と協力し,さらなる理解と変革に向けた戦略の創出を目指している.
訳者紹介
田沢 恭子(たざわ きょうこ)
お茶の水女子大学大学院人文科学研究科英文学専攻修了.
大学で英語教育に携わるとともに出版・実務の翻訳に従事.