グローバル・フィーバー 地球温暖化の症状と対応策
更新日:2010/04/30
サンプルページ(PDF)
・ 目次、第一章
・ 参考文献 / 原注
概要
様々な観測データから,地球の温暖化が着実に進行しており,人間の経済活動がその原因の1つであることにもはや疑いの余地はない.著者は医学の教授という立場から,現状を「地球の発熱とその合併症」ととらえ,地球温暖化の現状とこのまま温暖化が進んだ場合の将来について診断を下している.「診断が確定するまで待つ医者は,患者を死なせることになる」という警句を引き合いに出し,「いつまでも続く分析や,費用対効果に関する結論の出ない議論を待っている余裕はない」と警告している.一方で,19世紀以降の飛躍的な医学の進歩を例に挙げ,「人間は大きな難問に直面すると,素晴らしい独創性を発揮できることを証明してきた」のであり,悲観的になる必要はないと述べている.
地球環境問題は,対策を施したらすぐに効果が出るものではなく,知らないうちに気候システムの転 換 点を通過してしまうかもしれない.そしてこの問題は,次の世代にも大きく影響する問題でもある.
本書において著者は,温暖化の現状,対策を講じなかった場合にどのようなことになるのか,そして解決策としてどのようなものがあるのかを,豊富な図や写真を用いて,わかりやすく説明している.太陽光発電,プラグインハイブリッド車や電気自動車,原子力発電所の普及だけでなく,高温岩帯発電や波力ポンプなど,独自の解決策も提案している.地球環境問題は「次世代に解決してもらうような問題ではない」.懐疑的な人を含め,この問題に関心のある全ての人にお勧めできる一冊である.
目次
第一章 温暖化の全体像
第二章 もうカンザスじゃないみたい
第三章 茹ゆでガエルは動くのか?
第四章 気候が”ポン!”と変化する
第五章 旱かんばつ魃――破滅への危険な坂道
第六章 なぜ砂漠が広がるのか
第七章 ゆっくりとした変化から急激な変化へ
第八章 悪循環の原因とは?
第九章 あの薄青の空
第十章 地域的な破滅と地球規模での崩壊
第十一章 困難がまとまってやってくる
第十二章 二重の脅威となるメタン
第十三章 突然の気候変動
第十四章 CO2の海
第十五章 長期的な予測
第十六章 やり方を変えるには
第十七章 行いを改めるには
第十八章 気候に対する楽天主義者
第十九章 二〇二〇年までに増加を減らす
第二十章 大きな戦いに備えて
第二十一章 一回で成功させる
謝辞
訳者あとがき
原注
図表リスト
参考文献
索引
編著者紹介
ウィリアム・H. カルヴィン(William H. Calvin)
1939 年にカンザスシティーで生まれる.本物のアメリカ中産階級の家庭で成長したが,1962 年からのシアトル暮らしでは少し違う雰囲気も身につけた.大学に入る前にジャーナリズムと写真について経験を積み,ノースウエスタン大学では物理学を専攻した.その後,MIT とハーバード大学医学部での研究を通じて神経生理学に手を広げ,1966 年にワシントン大学で生理学と生物物理学の博士号を取得した.生物物理学という経歴に加えて,四半世紀にわたって文献を追いかけてきたおかげで,気象学者や海洋学者と仕事の話ができる.現在はワシントン大学医学部の客員名誉教授を務めている.大学の神経外科医や精神科医と長い付き合いがあるが,患者を治療したことは一度もない.研究の大部分は脳細胞と脳回路,さらには大きな脳の進化の歴史に関するものとなっている.氷河期の間に人類の大きな脳がどうしてそんなに急激に進化したのかを解明しようとしているときから,気候に注目し始めた.28 年間で14 冊の本を執筆している.過去に出版した本や著者自身が撮影した写真の多くを次のサイトで見ることができる:http://global-fever.org/
訳者紹介
千葉 啓恵(ちば ひろえ)
東北大学大学院農学研究科修士課程修了.化学会社研究所勤務を経て生物科学・自
然科学関連の翻訳者に.共訳書に『幹細胞WARS 幹細胞の獲得と制御をめぐる国際
競争』(西川伸一 監訳,志立あや/ 千葉啓恵/ 三谷祐貴子 訳,一灯舎,2009)がある.