ウォール街の崩壊の裏で何が起こっていたのか? セルサイドからバイサイドへの勢力の逆転を現場の声で伝える

更新日:2009/07/31

ウォール街の崩壊の裏で何が起こっていたのか?

――セルサイドからバイサイドへの勢力の逆転を現場の声で伝える

リチャード・ゴールドバーグ(Richard Goldberg) 著

田村 勝省 訳

2009年7月 発行

定価 2,200円(+税)

ISBN 978-4-903532-48-6

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・  序文、目次

概要

 変化して止まない常に騒然としているウォール街では、歴史に残るような戦いが繰り広げられている。本書はセルサイド(伝統的な商業銀行と投資銀行)とバイサイド(成り上がりのヘッジ・ファンドやプライベート・エクイティ会社など)という巨人2人の間の権力闘争を追跡したものである。
 一流の金融機関で30年間を過ごしてきた本書の著者であるリチャード・ゴールドバーグは、このダイナミックな分野で起こっていることや、古いセルサイドの門番から新しいバイサイドのプレーヤーへという権力のシフトの背後にある要因について、詳細な説明を展開している。
 変化の原動力(流動性と金融技術)と変貌の立役者(ヘッジ・ファンド、プライベート・エクイティ会社、金融企業家、寄付金基金、取引所、政府系ファンド)を検証し、さらに、戦いにおける勝者と敗者にとっての戦略的な意義を概観している。これは重要なことだ。著者はこれらすべてを、長年にわたる自らの経験とサブプライム住宅ローンに端を発する金融危機や信用の収縮、およびそれに伴うグローバル企業の変貌という劇的な背景のなかで述べている。そして、2008~2009年にかけての金融危機を教訓として、新たな対応策の提案も行っている。
 ゴールドバーグが戦いの主要なプレーヤーに対する独自の経験や知識、人脈をもっているおかげで、本書は、現場の状況を生き生きと伝えるものになっている。ウォール街の戦いで足跡を残した将軍たちに関する魅力的な逸話や物語にあふれているからだ。

目次

謝辞

はじめに ――「ウォール街の戦い」の始まり

戦端はどうやって開かれたのか

戦闘を率いた将軍たち

作戦計画

パートⅠ ウォール街変貌の原動力

第1章 流動性の大海原

弾薬の使いすぎ

王様

王様万歳

事例研究:ブラックロック――味方としての流動性

事例研究:AIG――敵方としての流動性

これらの示唆する点

第2章 デジタル時代の金融情報

広く速く安く

戦場での両サイド

フロントエンドの販売とバックエンドの執行

事例研究:マイケル・R・ブルームバーグ――情報の民主化

リサーチはバイサイド側に行く

個人投資家はバイサイドに行く

事例研究:バークレイズ――金融技術と情報で最先端

事例研究:ソシエテ・ジェネラル・グループ――金融技術と情報で一歩後れを取っている

これらの示唆する点

第3章 プライム・ブローカレッジの集会所

あの当時はそうだった:バックオフィスというドル箱

今はこうだ:振り子が動く

事例研究:ドイツ銀行――偶然のプライム・ブローカー

これらの示唆する点

パートⅡ ウォール街変貌の立役者達

第4章 ヘッジファンド:バイサイドのプレーヤー、セルサイドの敵

アナリストがこちらにやってくる

二%と二〇%

大数の問題

事例研究:シタデル・インベストメント・グループ――方程式の需要側

事例研究:カルパース――等式の供給側

これらの示唆する点 90

第5章 プライベート・エクイティ:バイサイドのプレーヤー、セルサイドの友

儲かるパートナーシップ

流動性とレバレッジ

古い地盤を失って新しい領土を得る

戦線が収束する

リーマンの培養器

事例研究:ブラックストーン――セルサイドのM&Aからプライベート・エクイティまで

事例研究:フォートレス・インベストメント・グループ

――セルサイドのトレーダーからプライベート・エクイティへ

これらの示唆する点

第6章 企業家から寄付金基金まで:バイサイドの触媒

バイサイドは申し込みさえすればいいだけ

騎兵隊がやってきた――システム企業家だ

企業家は生まれるのではなく作られる

事例研究:ラバ・トレーディング――包括的な市場情報

事例研究:マーキット・グループ――公正価値評価

事例研究:Gトレード――電子的取引の執行

さらなる増援隊――寄付金基金

これらの示唆する点

第7章 取引所:セルサイドは声、バイサイドは電子

バイサイドの盟友

ある男が持っていた取引所のビジョン

電子版取引所

事例研究:ニューヨーク証券取引所(NYSE)

――発声方式の国内派から電子式の国際派へ

これらの示唆する点

第8章 政府系ファンド:今日はセルサイド、明日はバイサイド

強力なプレーヤー

金融機関:ファンドはニーズがあれば出かける

政府系ファンド:優位性があるのでもてはやされる

事例研究:シティグループ――二、三ドル恵んでいただけませんか?

これらの示唆する点

パートⅢ ウォール街崩壊の現実と将来

第9章 セルサイドの被害、バイサイドにとっての意義

メイン・ストリートからウォール・ストリートへ

三幕での瓦解:ベア・スターンズ

やむを得なかった連合

事例研究:JPモルガン――戦場での勝利

事例研究:リーマン・ブラザーズ――戦場に倒れる

これらの示唆する点

第10章 バイサイドの被害、セルサイドにとっての意義

バイサイドのダムのひび割れ

バイサイドのダムの将来

事例研究:モルガン・スタンレー――バイサイドを信奉

事例研究:D・E・ショー ――セルサイドを信奉

これらの示唆する点

第11章 規制面での意義

責任のなすり付け合い

格付機関の失墜

平坦でなかった過去

現在を元通りにする

これらの示唆する点

第12章 将来への意義

金融システム――次に完結すべきこと

セルサイドの商業銀行――新しい戦場

セルサイドの投資銀行――変更された戦場

バイサイド――戦場のシフト

ウォール街の戦いの結論

索引

著者紹介

リチャード・ゴールドバーグ(Richard Goldberg)

リチャード・ゴールドバーグは,リーマン・ブラザーズ,ラザード,ワッサースタイン・ペレーラなどで通算25 年間の勤務経験を持つウォール街のベテランである.ゴールドバーグは,金融機関を相手とするバンカーとして金融サービスの転換にかかわる取引に数多くの助言を提供してきた.また,コロンビア大学国際公務大学院の教員であり,ボストン・カレッジのキャロル経営大学院やブランダイス大学の国際経営大学院で教鞭を取った経験もある.

訳者紹介

田村 勝省(たむら かつよし)

1949 年生まれ.東京外国語大学および東京都立大学卒業.旧東京銀行で調査部,ロンドン支店,
ニューヨーク支店などを経て,現在は関東学園大学教授,翻訳家.
1985 年~ 1990 年 高校教諭等
1990 年~現在 日本語教師,翻訳業
翻訳書:『新しい金融秩序』(日本経済新聞社,2004 年)
『ウォール街 欺瞞の血筋』(東洋経済新報社,2005 年)
『グーテンベルクの時代』(原書房,2006 年)
『ドルはどこへ行くのか』(春秋社,2007 年)
『謎・なぞ ――歴史に残るミステリー』(一灯舎,2008 年)
『世界開発報告2009』(一灯舎,2008 年)
『アメリカ大恐慌(上下)』(NTT 出版,2008 年)
『大転換 ――帝国から地球共同体へ』(一灯舎,2009 年)
『企業の名声 ――トップ主導の名声管理・回復十二か条』(一灯舎,2009 年)


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