更新日:2008/03/31
・ 概観
農業は21世紀においても,引き続き持続可能な開発と貧困削減の基本的な手段である.発展途上国の貧困層(1日2ドル未満の生活をしている人々は21億人,同1ドル未満は8億8,000万人)は4人に3人の割合で農村部に居住しており,そのほとんどが生計を農業に依存している.貧困層の居住地と特技を所与とすれば,2015年までに貧困と飢餓を半減するというミレニアム開発目標を達成し,その後も数十年間にわたって貧困と飢餓の削減を継続するためには,農業の振興は至上命題である.農業だけでは貧困の大幅な削減を達成するのに不十分であろうが,ほとんどの途上国にとって農業は有効な開発戦略の基本的要素といえよう.
『世界開発報告』が農業に焦点を当てたのは25年も昔のことであり,それ以降,新しい機会やチャレンジがまったく異なる状況下で出現してきていることを考慮に入れて,農業をどのように開発のために活用できるかについて再検討する時期がきている.そのために,「開発のための農業」という副題の本報告書では,次の3つの重要な問題に取り組んでいる.
・農業は開発のために何ができるか? 農業は多数の国で成長のベースになって貧困を削減してきているが,政府や援助国が農業に関して政策怠慢の歳月を逆転させて,過少投資や誤った投資を是正すれば,もっと多くの諸国が利益を享受できるだろう.
・開発のために農業を活用するに当たって有効な手段は何か? これには貧困家計の資産を増やすこと,小自作農(および農業全般)の生産性を高めること,農村部の非農業経済に貧困層がつかみ取れる機会を創出することなどが含まれる.
・開発のための農業という課題はどうしたらうまく実施できるか? 各国の経済・社会状況に適した政策や意思決定プロセスを設計すること,政治的支持を動員すること,農業の統治を改善することが重要である.
本年度の報告書は世界銀行の『世界開発報告』として第30号に当たる.