世界の雇用及び社会の見通し2016
更新日:2017/03/30
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・ 序文、目次
概要
『世界の雇用および社会の見通し2016』は,貧困削減の戦いにおいてはディーセント・ワークが最も重要であることを示している.同報告書の指摘によれば,貧困率は多くの新興国・開発途上国で低下傾向にあったものの,大半の先進国では就労貧困率も含め,上昇傾向をたどってきている.本報告書では,仕事の質と貧困削減にお
ける社会的保護の役割に特別な注意を払いながら,貧困層が依存するようになってきている仕事と所得の種類を検討する.この検討において,ディーセント・ワークの機会が貧困層にとって入手可能にならない限り,貧困を持続可能な形で削減することは不可能であることが証明されている.この発見は過去20 年間にわたる100 を超える国々――先進国,新興国,開発途上国を含む――の労働市場と貧困のトレンドに関する分析に基いている.
この報告書では,ディーセント・ワークの機会を拡大し,貧困を削減することにおいて,政策が果たす役割を検
討している.仕事中心の経済政策,雇用プログラム,企業開発,社会的保護,社会的対話などの分野における
各国の一連のイニシアティブを詳述している.そこから出てくる証拠は,ディーセント・ワークに関する政策は,
設計が良ければ貧困の終焉に成功裡に貢献することができることを示している.そのような政策によって,特に
貧困層の大部分が生活する農業部門と農村部において,生産性を向上させることができる.また,このような政
策は,開発途上国においてフォーマル雇用への移行を促進し,就労貧困層の所得見通しを改善することにも役
立つ.本報告書では,貧困と不平等を削減し,したがって成長をより包摂的なものにすることにおいて国際的な
労働基準が果たす役割も考察している.成長が包摂的であることは,生産がグローバルに細分化されていると
いう性格のゆえに,最脆弱層が取り残されることがないようにするためには必須の要素である.
この分析は,「持続可能な開発目標」(SDG)を達成するすることにおいてディーセント・ワークが果たす役割に
ついての証拠を提供している.SDG は国際連合の「持続可能な開発のための2030 アジェンダ」の中核となっ
ている.
目次
序文
謝意
要約
はじめに
パートI 貧困層の仕事と所得
1. 貧困と仕事の世界:世界的動向の概要
A. 貧困動向の概要
B. 貧困層の内訳と雇用形態
C. 貧困層の収入源
D. 所得以外の貧困の諸側面
E. 結語
補遺A. 国・地域・所得グループ
補遺B. 貧困層・非貧困層・貧困率の分布
補遺C. 貧困層の所得源
補遺D. 雇用形態別にみた貧困層の所得源
補遺E. 貧困の変化
補遺F. 貧困にかかわる所得以外の部分の側面
注
参考文献
2. 所得ギャップに取り組む
はじめに
A. 貧困を根絶するために必要な所得を推計する
B. 人口動態的・経済的な従属比率とディーセント・ワークの不足
C. 所得ギャップを埋めるのに必要な政策対応の組み合わせ
D. 結論
補遺A. 貧困をなくすための最低金額(総額と構成)
補遺B. 国別の総貧困ギャップ:水準と構成(極貧・中貧,2012 年)
補遺C. 総所得ギャップが現行の公的な社会的保護支出に
占める比率(貧困線はさまざま,2012 年)
補遺D. 社会的保護が貧困の削減と防止に及ぼす影響(国別データ)
補遺E. 社会的保護ないし労働所得の増加:簡略化された個別分析
補遺F. 社会的保護により補填されるギャップを推定する
方法論に関する補遺
補遺G. 各国の出所:家計調査のリスト
注
参考文献
3. 貧困を削減するために成長と仕事を変革する
はじめに
A. 成長と貧困の概観
B. 貧困削減のために仕事を変革する
C. 結論と本報告書のパートⅡへの橋渡し
補遺A. 成長・不平等・貧困
補遺B. 雇用の種類と貧困率
注
参考文献
パートⅡ 貧困を終わらせるために仕事と所得を変革する政策
4. 貧困削減に対する人権ベースのアプローチ
はじめに
A. 貧困削減を可能にするメカニズムとしての国際労働基準
B. 貧困層に届くように国際労働基準の適用と執行を改善する
C. 結論
注
参考文献
5. 農村経済において貧困を終わらせるための
ディーセント・ワークの役割
はじめに
A. 農業と農村経済:貧困削減に向けた機会と挑戦課題
B. 農業生産性の上昇を通じて貧困を削減する
C. 小自作農の代替策:農場外活動と農業賃金雇用
D. 結論
注
参考文献
6. 人々を支援し,良質の仕事を促進する
はじめに
A. 生産年齢外の人々と働くことができない人々の間における
貧困の軽減において,社会的保護が果たす役割
B. 人々が雇用に戻るのを支援する
C. 仕事の質と就労貧困に取り組む
D. 結論:労働市場制度と社会的対話を通じて反貧困戦略に
首尾一貫性を確保する
注
参考文献
著者紹介
国際労働機関(ILO:International Labor Organization)
ILO は1919 年に,ベルサイユ条約によって国際連盟と共に誕生した.第1 次世界大戦後の社会改革に対して高まる懸念,そしてあらゆる改革は国際的なレベルで進められるべきだという確信を体現するものとして設立された.
第2 次世界大戦後,フィラデルフィア宣言によってILO の基本目標と基本原則が拡大され,力強く再確認された.宣言は戦後における独立国家数の増大を予見し,大規模な対途上国技術協力活動の開始を明言した.1946 年,ILO は新たに設立された国際連合と協定を結んだ最初の専門機関となり,創立50 周年にあたる1969 年にはノーベル平和賞を受賞した.
訳者紹介
田村 勝省(たむら かつよし)
東京外国語大学および東京都立大学卒業.
旧東京銀行および関東学園大学教授を経て翻訳家.