FRBの呪いと第二次マネタリスト革命
更新日:2015/11/05
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・ 序文,目次
概要
1970 年代から現在までの過去40 年余りの間には,金融・通貨危機が頻発した.そして,まだ21 世紀を迎えたばかりのアメリカは住宅抵当金融,ヨーロッパは国債について膨大なバブルを抱えていたということがその特徴であり,結局,それが危機をもたらした.
著者のブレンダン・ブラウンは,FED を中心に各国の金融政策の歴史を分析し,金融不安定をもたらした原因を詳しく解説している.著者は,その原因の1 つとして「インフレターゲット」を取り上げている.これは,現在の日本にも当てはまる.このようなインフレへの信仰がなぜ受容されているのだろうか.FED を初めとする中央銀行は「デフレ恐怖症」を患っている,というのが著者の確信に満ちた診断であり,「悪いデフレ」だけでなく「良いデフレ」もあると主張する.そして代替策として,「第二次マネタリスト革命」を提唱している.これは,1970年代にフリードマンやカール・ブルンナーを中心とする「第一次マネタリスト革命」で得た教訓を活かしたものであり,本書の中で懐疑論に答えるという形で具体案を示している.歯に衣着せぬ語り口だが,著者の主張は,ハイエクを筆頭とするオーストリア学派の「非常に複雑な経済プロセスに関して,あまりに大きな裁量権を誤りを免れない人間の手に委ねるべきではない」という警告に則したものである.本書では,いわゆる日本の「失われた10 年」とそれ以降についても,1つの章をさいて,経済状況や日銀および政府の対応を詳細に検討している.また日本語版には,「日本語版への序文」を新たに追加し,バーナンキ議長に続くイエレン時代についての評価も掲載.
世界経済の動向や,金融政策に感心のある人にとって,刺激的な一冊となっている.
目次
序文
謝辞
日本語版への序文
第一章 金融のカオスがどのようにして根拠なき熱狂を駆り立てるのか
FEDの世界的な呪いとは何か?
経済的破壊の二形態
金融ウィルスは見えざる手をコントロールしているソフトをどのようにして攻撃できるのか
金融混乱はどのようにして投機熱の上昇を煽動するのか?
第二章 一〇〇年間にわたる金融混乱
実現しなかった絶好のスタート
第 一 次世界大戦勃発に伴う危機
アメリカが中立だった時期におけるFED内部での紛争
最初の金融混乱――一 九一五–一 六年の大インフレ
財のインフレから 一 九二〇年代における資産の大インフレへ
米ドルと金利は低すぎ、マネタリー・ベースの伸びは高すぎた
一 九二〇年代の不均衡に関するオーストリア学派の見方
ベンジャミン・ストロングはワイマール共和国の信用バブルを煽動
大恐慌でのFEDの失策に関する修正主義者の話
一 九三六–三七年の資産価格インフレと必然的なローズベルト不況へ
新しい国際金本位制(一 九五三 –七 一 年)下でも、アメリカの金融は安定せず
マーティン=バーンズのFEDが国際ドル本位制を破壊した
一 九五七–六八年の大資産価格インフレから 一 九六九年と一 九七三 –七四年の暴落
ボルカーの信用・資産バブルへ
グリーンスパンの異説がメキシコやアジア、そしてアメリカで、バブルを煽り破裂させた
FEDは金融不均衡のあらゆる兆候(二〇〇三–〇六年)をどうして見抜くことができなかったのか
東アジアが世界的な信用バブルを引き起こしたわけではない!
第三章 デフレ恐怖症
大恐慌のデフレ神話
デフレの定義―― 一 般、オーストリア学派、マネタリスト
悪いデフレは悪い貨幣制度に由来する
デフレ恐怖症の起源
デフレ恐怖症の悪性バーナンキ主義者変種
デフレと社会正義
アメリカ、日本、スイスでは良いデフレが起こらなかった
通貨ヘリコプターの幻想
良いデフレの次善の策としてのマイナス金利レジーム
公共支出は良いデフレやマイナス金利の代替策としては不適切
反事実的な歴史――二〇〇八–〇九年に緊急的なマイナス金利が導入され、かつ量的緩和が行われなかった場合
第四章 第二次マネタリスト革命宣言
ケインズ主義というウィルスは議会のFEDに対するコントロールをどのように侵したのか
第 一 次マネタリスト革命とその欠陥
通貨当局者の反革命
第二次マネタリスト革命に向けて
オーストリア学派の革命家は大衆の怒りを煽動しなければならない!
すべてのマネタリスト革命家はルールについて合意し、裁量的なコントロールは拒否する
第二次マネタリスト革命は金本位制やシカゴ学派から若干の教訓を抽出している
金融安定の定義とその本来的なトレードオフ
一 九〇七年とチューリップ球根からの教訓
金本位制下におけるマネタリー・ベース・コントロール
マネタリー・ベース・コントロールをどうやって復活させるか?
MBC批判に反駁する
マネタリー・ベース・コントールへの復帰が容易だったことなど決してない!
第五章 アメリカの通貨戦争機構
一 九二〇年代と三〇年代における通貨戦争 ―― 通貨戦争とは 一 体どういう意味か?
回避可能であったリチャード・ニクソンの通貨戦争
アーサー・バーンズFEDの通貨戦争犯罪
ボルカーのFEDは独自のハード・ドル戦争を展開
グリーンスパンのドル非防衛
バーナンキは通貨戦争を正当化する
ケインズ主義の戦士は世界的な不均衡と戦う
FED神話 ――アジアの貯蓄余剰が世界的な信用バブルを煽った!
マネタリストの革命家は世界的な不均衡を心配すべきだろうか?
第六章 バーナンキ主義とは金融の無法地帯
バーナンキ主義の要素 一 〇カ条
バーナンキ主義に対する反乱計画
フリードマンの子孫だというバーナンキ主義の主張
信用経路の封鎖のという新ケインズ主義の亡霊
金融の要の破壊からテーラー・ルールの腐敗へ
バーナンキ主義者は財政面での微調整とケインズ的な「貯蓄パラドックス」を採用する
バーナンキはフリードマンのブラック・ボックスを開ける
QE(量的緩和)という時限爆弾
長期金利の操縦
大規模な信用操作
バーナンキ主義者のデフレ恐怖症
金融政策策定にかかわるバーナンキの 一 〇の原則
スタイル・形・政治
バーナンキ主義者の指名プロセス
中央銀行総裁の無謬性
バーナキ主義とフランスの関係
薄っぺらな透明性と巨匠主義(マエストロイズム)の継続
巨匠バーナンキの演奏は運が尽きる
バーナンキ主義の世界的な広がり
なぜ悪魔払いによってFEDの通貨権限を終わりにしなければならないか
第七章 FEDは日本の大デフレ神話を信じている
日本のデフレ神話
誤診:株式リスク選好不振の発見と治療に失敗
ゼロ金利限界問題は問題ではない
非慣習的金融政策の実験は日本では失敗した
バブルを煽動した金融混乱の分析に失敗
金利操作がケインズ「革命」を可能にした
債務減らしの神話
第八章 FEDの呪いを乗り切り利益を得る方法
受動的な投資家は過去の幸運が続くものと信じている
能動的投資家は市場価格を検討する
投資家は根拠なき熱狂の疑いに対してどのように反応すべきか?
二つの悪夢のようなシナリオ ――「 一 九二九年」と「 一 九三七年」
バーナンキ主義者の金融ウィルスに侵された市場にどうやって投資するか?
高級住宅用不動産市場――温度上昇の兆候
バーナンキ主義下における債券市場戦略
ポートフォリオ構築における金の役割
株式リスク負担の死は資本主義の死!
参考文献
索 引
著者紹介
ブレンダン・ブラウン(Brendan Brown)
イギリスのロンドンで活躍しており,多くの人が注目している市場エコノ
ミスト.ロンドン・スクール・オブ・エコノミクスで博士号,シカゴ大学
で経営修士号(MBA)を修得.三菱 UFJ インターナショナル(在 ロンドン)
調査部門主任.金融が混乱している世界のなかで,世界的な投資戦略の実
際的な問題を解決するために,シカゴの伝統の精髄をもって抽出したオー
ストリア学派の教えを適用しようとしている.日欧の金融媒体に定期的に
寄稿している.
訳者紹介
田村 勝省(たむら かつよし)
東京外国語大学および東京都立大学卒業.
旧東京銀行および関東学園大学教授を経て翻訳家.