ヨーロッパの行き詰まり
更新日:2014/07/08
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・ はじめに,目次
概要
ヨーロッパではギリシャの財政破綻を筆頭に全般的に様々な政治・経済問題が表面化しており,ユーロ地域は今や行き詰まり状態にある.それは,統一通貨ユーロの存続だけでなく,各国の主権や救済措置の是非,問題の責任を誰がとるのかといったことにも関わっている.
筆者のデイヴィッド・マーシュは,前著において「ユーロの存続した最初の10 年間においては,敗者も勝者もいずれも存在しておらず,この期間に得られた教訓は,単一通貨ユーロが今後無傷で生き残れるかどうか全く不確実になったということである」と述べていた.それから5 年後,不確実性は一層深まっており,このことから筆者は「一体,今何が起こっているのかを理解するために」本書を書くにいたったのである.
著者は債権国と債務国の争いや欧州中央銀行と各国銀行の役割,格差の拡大などといったユーロ地域が抱える問題を,要人の発言や世論を引用しながらその真相を明らかにしている.また,アメリカや,IMF との関わり,ユーロ地域の混乱が与える影響,アジアとの関係など,グローバルな視点からも考察を行っており,本書の最終章で現状を打開するための諸政策を提案している.
翻訳版では,日本語版序文として「日本と欧州の類似点」を新たに追加.現在のユーロ圏の状態が1990 年代半ばの日本とよく似ていることから,今後ユーロ圏が「失われた20 年」と同じ道を辿る可能性を指摘し,さらにアベノミクスがユーロ地域に与える影響も考慮に入れて,混迷を深めるユーロ地域の今後を検討している.
目次
目次
序文
はじめに
日本語版への序文 ――日本と欧州の類似点
第一章 不幸な家族
第二章 幻滅
第三章 ドイツ問題再論
第四章 勝者と敗者
第五章 危険な空白
第六章 取り返しのつかない誤り
第七章 技術官僚のつまずき
第八章 ECBは他の中央銀行とは違う
第九章 キプロスの騒動
第十章 主権――転換点
第十一章 恐怖が鍵を握っている
第十二章 ドイツの限界
第十三章 フランスとの関係
第十四章 ブンデスバンクの反撃
第十五章 イタリアでは土壇場が連続している
第十六章 銀行同盟の妄想
第十七章 IMFにとっての欧州の難問
第十八章 アングロ・サクソンの躊躇
第十九章 アジアのスター台頭
第二十章 戦争と平和
原注
索引
著者紹介
デイヴィッド・マーシュ(David Marsh)
デイヴィッド・マーシュは戦後の通貨問題に関する欧州随一の年代記作者である.また,公的通貨・金融機関フォーラム(OMFIF)の共同創設者であり,議長を務めている.1978 – 95 年にファイナンシャル・タイムズ紙に勤務.その間に仏・独に駐在して欧州担当の編集主任を務めた後,シティの金融機関で仕事をしている.欧州の政治・通貨に関して高い評価を得た著書を4 冊上梓しており,それにはTheEuro: The Battle for the New Global Currency (2009, 2011)[邦訳:『ユーロ 統一通貨誕生への道のり、その歴史的・政治的背景と展望』(一灯舎,2011 年)]が含まれている.
訳者紹介
田村 勝省(たむら かつよし)
1949 年生まれ.東京外国語大学および東京都立大学卒業.旧東京銀行で調査部,ロンドン支店,ニューヨーク支店などを経て,現在は関東学園大学教授,翻訳家.
訳書
『アメリカ大恐慌(上下)』(NTT 出版,2008 年)
『シュンペーター伝 革新による経済発展の預言者の生涯』(一灯舎,2010 年)
『ユーロ 統一通貨誕生への道のり、その歴史的・政治的背景と展望』(一灯舎,2011 年)
『ユーロの崩壊 ヨーロッパの金融失敗からの脱出ルート』(一灯舎,2012 年)
『世界給与・賃金レポート2012/2013 給与・賃金と公平な成長 』(一灯舎,2013 年)
『世界労働レポート2013 経済・社会の構造を修復する』(一灯舎,2014 年)
『世界開発報告2013 仕事 』(一灯舎,2014 年)
『世界雇用情勢2014 雇用なき回復のリスク?』(一灯舎,2014 年)
『悪い奴ほど合理的 腐敗・暴力・貧困の経済学』(NTT 出版,2014 年)