世界給与・賃金レポート2012/2013
更新日:2013/05/07
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・ 序文,目次
概要
最近の世界の賃金のトレンドを見れば,世界危機のインパクトはまだ多く残っています.1980 年代以降,企業利益のなかに占める労働報酬のシェアが低下し,資本利益のシェアが増加し続けています.その一因として金融のグローバル化と比較的寛大な税制をあげることができます.本書は労働に対する諸制度の改善の他,労働報酬の伸びが労働生産性の伸びに連動する社会的に公正な給与政策の必要性を強調しています.また,輸出を伸ばす政策には輸入の増大や仕事の海外への移転になやむ近隣窮乏化を避けるために,持続的な成長に比例する国内消費の増加のための所得配分を実現することが重要であるとしています.
目次
序文
謝辞
要約
パートI 賃金の主要トレンド
第1 章 世界経済の状況:危機,不況,及び雇用
第1.1 節 経済成長率は地域ごとに大きく異なる
第1.2 節 世界の失業率は高水準のままである
第2 章 実質賃金
第2.1 節 各地域で上昇率鈍化
第2.2 節 性別給与格差
第3 章 地域の推定値
第3.1 節 全体の上昇率は複雑な状況を覆い隠している
第3.2 節 先進国
第3.3 節 東ヨーロッパ・中央アジア
第3.4 節 アジア・太平洋
第3.5 節 ラテンアメリカ・カリブ
第3.6 節 中東
第3.7 節 アフリカ
第4 章 最低賃金と勤労貧困層
第4.1 節 先進国
第4.2 節 途上国及び新興国
パートII 労働シェアの低下と公平な成長
第5 章 労働所得シェアの低下
第5.1 節 労働シェアのトレンド
第5.2 節 賃金と生産性の格差
第5.3 節 金融市場とその他要因の役割
第6 章 労働所得シェアが経済成長に及ぼす影響
第6.1 節 労働シェアの低下と総需要:影響は不透明
第6.2 節 最適な労働シェアを求めて
第6.3 節 「大不況」とバランスのとれた成長の機会
パートIII 公平な成長にとっての意義
第7 章 対内外不均衡
第7.1 節 機能別・個人別の所得分配
第7.2 節 賃金ベースの消費は減退し回復に悪影響を与えている
第8 章 賃金と生産性を再び連動させる
第8.1 節 政策措置の調整
第8.2 節 既存制度の強化
第8.3 節 労働市場を超えて
第8.4 節 途上国の特異性
補遺
補遺Ⅰ 世界の賃金トレンド:方法論の問題
補遺Ⅱ 労働生産性と賃金の間の乖離が単位労働コストや労働所得シェアにどう影響するか
補遺Ⅲ 労働シェアの決定要因
補遺Ⅳ 労働シェアが総需要に及ぼす影響
注
参考文献
著者紹介
国際労働機関(ILO)
国際労働機関(ILO : International Labor Organization)は1919 年に,社会正義の促進,そして,世界的な平和とその持続を目的として設立された.創立50 周年にあたる1969 年にはノーベル平和賞を受賞している.この機関の事務部門,事業本部,調査研究センター及び出版部門の本拠は,ジュネーブにある国際労働事務局である.その管理運営は,40 以上の国にある地域総局及び現地事務所に分散されている.国際労働機関は国連に加盟する機関では独特の三者(政府,使用者,労働者)構成を採用しており,理事会にはこの三者の代表も含まれている.これは,政策策定や計画立案時には,経済を動かす社会的パートナーである労使代表も政府と等しく発言する権利をもっている,という理念に基づくものである.上記の三つの団体は,ILO が後援する各地域での活動や会合に参加するだけでなく,国際労働総会にも出席している.この国際労働総会は,毎年開催されており,世界の労働問題,社会問題を討議する国際フォーラムでもある.
国際労働機関は長い年月にわたり,労働組合,労働者,社会政策,雇用条件,社会保障,企業間の交渉や労働行政などに関する問題に,参加各国の様々な条件を考慮しつつ取り組んできている. 国際労働機関は,40 カ国以上からなる地域総局や労使団体間の情報交換を通して,助言や技術的な支援を行っている.この支援活動には,労働者の権利と企業間交渉に対する助言,雇用の促進,小規模な企業の発展を目的とした教育,計画の策定などが含まれる.またさらに,社会保証や労働条件,労働環境の安全性に関するアドバイス,労働に関する統計の比較と公表,労働者教育も行っている.
訳者紹介
田村 勝省(たむら かつよし)
1949 年生まれ.東京外国語大学および東京都立大学卒業.旧東京銀行で調査部,ロンドン支店,ニューヨーク支店などを経て,現在は関東学園大学教授,翻訳家.
訳書
『アメリカ大恐慌(上下)』(NTT 出版,2008 年)
『シュンペーター伝 革新による経済発展の預言者の生涯』(一灯舎,2010 年)
『ユーロ 統一通貨誕生への道のり、その歴史的・政治的背景と展望』(一灯舎,2011 年)
『世界開発報告2011 紛争,安全保障と開発 』(一灯舎,2012 年)
『世界雇用情勢2012 雇用危機の深刻化を予防 』(一灯舎,2012 年)
『ユーロの崩壊 ヨーロッパの金融失敗からの脱出ルート』(一灯舎,2012 年)
『世界開発報告2012 ジェンダーの平等と開発 』[共訳](一灯舎,2012 年)