更新日:2006/05/31
多くの途上国では,所得,健康,および教育等の面で,著しい不平等が長い間厳しい現実として存在している。不平等は資源の非
効率的利用や有効性に欠ける制度につながるため,長期的に開発にとって有害である。したがって,公正さを促進し,公平性を追
求するという公的措置には,果たすべき正当な役割がある。ただし,そのような措置は資源配分に関して,個人の自由と市場の役
割が最重要であるという点を認識したものでなければならない。
『世界開発報告2006』では,各国内および各国間における機会の不平等に関するデータが提示されるとともに,それが開発を阻
害するメカニズムが例証されている。同報告書では,開発にかかわる優先課題を決定するのに際しては,公平性を明示的に考慮す
るよう提唱している。すなわち,政策介入がなければ,資源,発言権,および能力が最低限にとどまるような人々の機会拡大をめざ
す公的措置を推奨している。国内的には,人間への投資,司法,土地,およびインフラへのアクセス拡張,そして市場における公
正さの促進を主張している。国際的には,グローバル市場の機能とそれを統治するルール,さらに,貧困国および貧困者がみずか
らの資質を増強する自助努力を支援すべく,補完的な援助の提供も検討している。世界銀行が有する60年間におよぶ経験に基づ
いた『世界開発報告2006』は,公平性が高いほど,貧困が減少し,経済成長が高まり,開発が進展し,そして,社会のなかで最貧層へ
の機会拡大が実現する,ということを理解するための必読書である。