世界開発報告 2023 移民・難民・社会
更新日:2024/04/10
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・ 序文、目次
概要
移住は開発における挑戦課題の1つである.約1億8,400万人――世界人口の2.3%――は自分の国籍がある国の外で生活している.そのうちのほぼ半数は低・中所得国に滞在している.しかし,その先には何が待ち受けているのだろうか?
グローバルな経済的不均衡,さまざまな方向へ向かっている人口構成のトレンド,そして気候変動などに対応するために世界が苦闘しているなかで,今後の数十年において,所得水準にかかわらずすべての諸国にとって移住は不可欠になるであろう.適切に管理されるならば,移住は繁栄に向けた力になることができ,国連の持続可能な開発目標の達成に役立つことができる.
『世界開発報告2023』は越境移動が移民の行き先国と移民の出身国,および移民と難民自身の両方に及ぼす開発面での影響を最大化するために,革新的なアプローチを提案している.それを提案している枠組みは,労働経済学と国際法から導出されており,移民のスキルや属性は移民の行き先国のニーズにどの程度適合しているか,そして移動の背景にある動機は何か,という2つの要因に焦点を合わせた「適合と動機のマトリックス(行列)」に依拠している.このアプローチは,政策担当者がさまざまな形態の移動を区別し,それぞれについての移住政策を設計することを可能にする.効果的な移住管理にとって国際協力は決定的に重要になるであろう.
目次
序文
謝辞
本報告書で示される重要な事項
用語集
略号
概観
移住はすべての国にとって必要である
政策担当者にとっての実践的な枠組み:「適合と動機のマトリックス」
適合度が高い場合には,大きな利益が得られる
適合度が低い場合,コストは複数国間で分担――かつ削減――される必要がある
移住をうまく機能させることは,物事のやり方を変えることを要請する
希望のメッセージ
注
参考文献
Chapter 1 適合度と動機のマトリックス
重要なメッセージ
人間を中心に据えたアプローチ
外国籍の人に注目する
2つの視点:労働経済学と国際法
適合度と動機のマトリックス
政策の優先順位
注
参考文献
スポットライト1 歴史
Part 1 あらゆる所得水準の諸国にとって移住はより一層必要になりつつある
Chapter 2 数字:誰が,どこへ,なぜ移動するのかを理解する
重要なメッセージ
現在のトレンド
動機とパターン
注
参考文献
スポットライト2 データ
Chapter 3 展望:傾向,必要性,およびリスクは変化している
重要なメッセージ
人口構成:今後に生じる労働者を求める競争
気候変動:苦難の中での移動の新たなリスク
注
参考文献
スポットライト3 方法論の考察
Part 2 適合度が高い場合には得られる利益は多くなる
Chapter 4 移民:繁栄をもたらす――権利を伴っていれば効果はより一層高まる
重要なメッセージ
より高い賃金を得ている
改善されたサービスへのアクセス
社会的コストへの対処
帰国
時には,失敗する
注
参考文献
スポットライト4 ジェンダー
Chapter 5 移民の出身国:開発に向けて移住を管理する
重要なメッセージ
送金がもたらす開発面の利益の全てを獲得する
知識移転の活用
労働市場に対する影響の管理
戦略的アプローチを採用
注
参考文献
スポットライト5 送金の測定
Chapter 6 移民の行き先国:経済および社会政策を通じて利益を最大化する
重要なメッセージ
移民の労働から得られる利益
経済的利益を最大化する
社会的包摂を促進する
注
参考文献
スポットライト6 人種主義,外国人嫌悪,および差別
Part 3 適合度が低い場合,コストは多国間で分担――そして削減――される必要がある
Chapter 7 難民:中期的な視点から管理
重要なメッセージ
開発に関わる挑戦課題を認識する
地域的な連帯を通じて責任の共有を強化
緊急対応という枠を超えて
法的地位と機会へのアクセスを組み合わせることによって恒久的解決策に向けて進展を図る
注
参考文献
スポットライト7 国内避難と無国籍
Chapter 8 困窮移民:尊厳の維持
重要なメッセージ
政策のトレードオフを認識する
国際的な保護を拡大する
合法的経路を通じて移民が移動する動機を変える
開発を通じて,移民のスキルや属性の適合度を高める
注
参考文献
スポットライト8 「根本原因」と開発
Part 4 移住をより良く機能させるにはやり方を変える必要がある
Chapter 9 勧告:移住をより良く機能させる
重要なメッセージ
はじめに
強固に適合:全ての人を対象に利益を最大化する
適合の程度が低く,恐怖が移動の動機である場合:責任の共有を通じることを含め,難民受け入れの持続可能性を確保する
適合度は低いが恐怖が動機ではない場合:尊厳を尊重し困窮移動の必要性を削減する
改革に向けて欠くことのできない事項
注
参考文献
索引
著者紹介
世界銀行
世界銀行グループは、2030年までに達成すべき2つの目標を掲げている。
・極度の貧困を撲滅:1日1.90ドル未満で暮らす人々の割合を2030年までに3%以下に減らす
・繁栄の共有を促進:各国の所得の下位40%の人々の所得を引き上げる
世界銀行は、世界中の途上国にとって欠かせない資金源、技術援助機関である。世銀は普通の銀行とは異なり、貧困削減や開発支援を目的とした他に例のないパートナーシップである。世銀グループは5つの機関で構成されており、その重要意思決定は加盟国が行う。
世界銀行グループ(本部所在地:米国ワシントンD.C.)は1945年に設立され、1万人以上の職員が世界120か国以上で業務にあたっている。
訳者紹介
田村 勝省(たむら かつよし)
東京外国語大学および東京都立大学卒業.
旧東京銀行および関東学園大学教授を経て翻訳家.