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・ まえがき、目次
概要
本書は、神経科医であり、障害のある人に対する独特の解釈や自らの経験を記した多くの著作があるオリヴァー・サックスのインタヴュー集である。インタヴューはほぼ三十年の期間にわたっており、サックスが亡くなる約四カ月前に行われた「サックス博士の回想」は、最も印象的である。インタヴューはさまざまな話題を含んでいるが、それらは、暖かさ、共感、そして独創的な好奇心という精神によって統一されている。対話を通じて、読者は、著書とは異なるサックスのまた別の一面を感じ取るだろう。
翻訳書では、サックスの著作になじみのない読者のために、サックス自身の著作の引用を含め、多くの訳注が追加されている。訳注を適時参照することによって、対話の内容や背景をより深く理解することができるだろう。
近年において生成AIの性能が大幅に向上し、今後も高まり続けるだろう。しかし、本書でサックスが語っているような、人間が持つ深い共感や思索、無意識、そして経験から生み出される独創性な考えは、AIには決して生成できないかもしれない。生物である人間の精神と身体が持つ柔軟さと豊かな潜在力を改めて認識させてくれる一冊である。
2024年6月29日の毎日新聞朝刊の書評欄(今週の本棚・評者:村上陽一郎)に掲載されました。
著者紹介
オリヴァー・サックス(Oliver Sacks)
オリヴァー・サックスは1933年にロンドンで生まれ、オックスフォードのクイーンズ・カレッジで教育を受けた。サンフランシスコのマウント・ザイオン病院とUCLAで医学研修を修了した後、ニューヨークに移り、そこで、後に著書『レナードの朝』で書くことになる患者たちに出会った。サックスは神経科医として50年近くにわたって働き、さらに、サックスの患者たちの奇妙な神経学的苦境と状態について述べている『妻を帽子と間違えた男』、『音楽嗜好症(ミュージコフィリア)』、『幻覚の脳科学』などを含む、多くの本を執筆した。この期間に、グッゲンハイム財団、国立科学財団、アメリカ芸術文学アカデミー、王立内科医会からの栄誉を含む、多くの賞を受賞した。オリヴァー・サックスは2015年に亡くなった。
訳者紹介
田村 浩二(たむら こうじ)
1965年茨城県生まれ。東京大学理学部物理学科卒業後、同大学院理学系研究科物理学専攻博士課程修了。博士(理学)。理化学研究所・研究員、米国スクリプス研究所・上級研究員等を経て、現在、東京理科大学・教授。生命の起源・遺伝暗号の起源を主な研究テーマにし、意識の起源にも関心を持つ。訳書に、マット・リドレー著『フランシス・クリック:遺伝暗号を発見した男』(勁草書房)、ポール・ストラザーン著『クリック・ワトソン・DNA:DNA二重らせん構造発見への階梯』(一灯舎)がある。