世界開発報告2022 公平な回復のための金融
更新日:2023/03/30
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・ 序文、目次、概観
概要
COVID-19(コロナウィルス感染症2019)のパンデミックは,最近の1世紀あまりの期間の中で,最も大きな世界的な経済危機のきっかけとなった.2020年には,経済活動が世界全体の90%の諸国で収縮し,世界経済は約3%の縮小を経験し,そして世界の貧困は最近の一世代で初めて増加した.各国政府は財政,金融(monetary),および金融部門の政策によって速やかに対応し,このことは危機がもたらす最悪の即時的な経済的インパクトを軽減した.しかしながら,世界は,パンデミックとその影響を緩和するために必要であった政府の対応策によって発生した,あるいは悪化させられた,長期にわたる金融および経済面での著しいリスクと依然として戦い続けなければならない.
本報告書は,COVID-19からの経済的回復において金融(ファイナンス)が果たす中心的な役割を検討している.低・中所得国への影響が最も大きいとみられる危機の結果についての深い分析に基づいて,本書はパンデミックに起因する相互に結び付いている経済リスクを緩和するための,一連の政策や措置を唱道している.そのリスクは,刺激措置が国内と世界全体の両方のレベルで停止されるのに伴ってより深刻化する可能性がある.本報告書は,金融の安定性に対する脅威を緩和するための不良債券に関する効率的で透明な管理,持続不可能な債務の秩序ある削減を可能にするための破産制度の改革,世帯や企業のために信用への継続的なアクセスを保証することを目的とするリスク管理と貸出モデルの革新,そして,公平な回復を支援する政府の能力を保持するための公的債務管理における改善,といった政策を提唱している.
目次
世界銀行グループ総裁による序文
序文
謝辞
略号
概観
はじめに
パンデミックの経済的なインパクト
パンデミックに対する経済政策面での対応:迅速だったが国ごとに大きく異なっている
金融リスクの解消:公平な回復のための前提条件
結論
注
参考文献
序論
はじめに
世帯に対するインパクト
企業に対するインパクト
金融部門に対するインパクト
政府の短期的な対応策とそれの公的財政に対するインパクト
注
参考文献
1. 回復にとって新たなリスクが生じてきている
はじめに
経済全体にわたって相互に結び付いている金融リスク
健康に関する危機から財務的な苦境へ:回復に対する新たなリスクの発生
グローバル経済
結論
注
参考文献
スポットライト1.1 金融包摂と金融の強靭性
2. 銀行が抱える不良資産の処理
はじめに
NPLはなぜ問題なのか?
NPLを特定する:資産の質,銀行の資本,および実効的な監督
増加しつつある不良債権を管理するための能力を構築
問題を抱えている銀行への対処
結論
注
参考文献
スポットライト2.1 零細金融機関の規制と監督を強化
3. 企業と世帯の債務再編 119
はじめに
倒産制度に注意すべき理由
正式な倒産の仕組みを強化
調停や仲裁などの代替的な[裁判外]紛争解決制度の促進
MSME向けにアクセスが容易で安価な法廷内および法廷外の債務処理手続きを確立
自然人債務者の債務免除と免責を促進
結論
注
参考文献
スポットライト3.1 小規模企業を維持するために零細金融を支援
4. 経済回復期,およびそれ以降における貸出
はじめに
新型コロナ感染症リスクの謎を解く:リスク可視性と求償性
リスク軽減策の改善
信用へのアクセスを可能にし,リスクに対処するための政策
結論
注
参考文献
スポットライト4.1 公的信用保証制度
5. 公的債務の管理
はじめに
COVID-19の公的債務に対するインパクト
債務危機の人的コスト
公的債務の管理と解決における新たな挑戦課題
公的債務の管理と困難に陥っている公的債務の解決
将来展望:歳入を動員し,透明性を改善し,債務交渉を円滑化するための改革
結論
注
参考文献
スポットライト5.1 資本市場のグリーン化:ソブリン・サステナブル債
6. 回復に向けた政策の優先順位
はじめに
最も緊急性の高いリスク源に対処する
回復に対する国内のリスクを管理する
グローバル経済全体にわたり相互に関係するリスクを管理する
より持続可能な世界経済を構築するための機会をつかむ
注
参考文献
索引
著者紹介
世界銀行
世界銀行グループは、2030年までに達成すべき2つの目標を掲げている。
・極度の貧困を撲滅:1日1.90ドル未満で暮らす人々の割合を2030年までに3%以下に減らす
・繁栄の共有を促進:各国の所得の下位40%の人々の所得を引き上げる
世界銀行は、世界中の途上国にとって欠かせない資金源、技術援助機関である。世銀は普通の銀行とは異なり、貧困削減や開発支援を目的とした他に例のないパートナーシップである。世銀グループは5つの機関で構成されており、その重要意思決定は加盟国が行う。
世界銀行グループ(本部所在地:米国ワシントンD.C.)は1945年に設立され、1万人以上の職員が世界120か国以上で業務にあたっている。
訳者紹介
田村 勝省(たむら かつよし)
東京外国語大学および東京都立大学卒業.
旧東京銀行および関東学園大学教授を経て翻訳家.