世界開発報告2021 生活向上のためのデータ活用

更新日:2022/02/24

世界開発報告2021

生活向上のためのデータ活用

世界銀行 著

田村 勝省 訳

2022年3月 発行

定価 7,0000円+税

ISBN:978-4-907600-73-0

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・  序文、目次、概観

概要

今日におけるデータの先例のない増加と日常生活におけるその遍在性は,データ革命が世界を転換しつつあることの兆候である.にもかかわらず,データの価値の多くは未利用のままである.ある1つの目的のために収集されたデータには,その活用において,当初期待されていた価値をはるかに超える経済的および社会的な価値を創造する潜在力がある.しかし,多くの障壁が邪魔をしており,その範囲は,整合性のないインセンティブや互換性を欠いたデータシステムから,信頼の根本的な欠如にまで広がっている.この『世界開発報告2021:生活向上のためのデータ活用』は,貧しい人たちの生活を改善することに対して,変化しつつあるデータの世界が持つ膨大な潜在力を探求している.しかし同時に,個人や,企業,社会に害をもたらしかねない裏口の扉を開ける潜在力をデータが持っていることも認識している.データが持っている有益な潜在力と有害な潜在力の間における緊張状態に取り組むために,本書は新しい社会契約の締結を要請している.その契約は,経済的および社会的な価値を創造するためにデータの利用や再利用を可能にし,そのような価値への公平なアクセスを確保し,そしてデータが有害な形で誤用されることはないだろうという信頼を育むようなものである.

本報告書はデータのより良い利用や再利用が,民間部門の成長を通じて市場の効率性や雇用創出を改善するだけでなく,公的部門の政策,プログラム,およびサービス提供の設計をどのように向上できるのかを評価することで始まっている.データが有するこのような価値の実現にとってはデータ統治(ガバナンス)の改善が鍵であることから,本書では次に,インフラ政策,データに関わる規則,経済政策,そして諸機関の能力がどのようにして有害な結果を防止しつつ,データの経済的および社会的な利益のためにデータの共有を可能にするかを検討している.本書は様々な考察の断片を繋ぎ合わせ,統合国家データシステムという野心的なビジョンを提示することで結びとしている.そのシステムは,高質なデータを作成し,安全な利用と再利用を促進する仕方でそのようなデータへのアクセスを可能にする,という約束を果たすであろう.このような機会と挑戦を検証することによって,本書はデータがどのようにして全ての人,とりわけ低・中所得国の貧しい人たちの生活に利益をもたらし得るのかを示している.

目次

序文

謝辞

略号

概 観

データを通じて開発目標を推進

データに関する統治を社会契約と適合させる

統合国家データシステムへの動き

参考文献

PART Ⅰ データを通じて開発目標を推進

Chapter 1:貧困者のためにデータの価値を活用

開発目標に資するデータの潜在力は活用されていない

データの略史

データの類型学

データの経済学と政治経済問題

開発のためのデータ:概念枠組み

データに関する社会契約の執行に向けたデータ統治の枠組み

すべてを統合:統合国家データシステムを確立

本報告書の構成

参考文献

スポットライト 1.1 :コミュニティが自らのデータを収集および分析する能力を

獲得するのを支援する

スポットライト 1.2 :新型コロナ感染症が流行している期間中とその後に低・中所得国が債務を管理するためには適正なデータが重要

Chapter 2:公益を促進する力としてのデータ

公的目的データの中心的な役割

公的目的データと開発:価値を高める3つの経路

公的目的データのカバレッジ,質,そして有用性におけるギャップ

データ・ギャップはなぜ持続するのか:公的目的データの政治経済学

公的目的データの潜在力を実現

参考文献

スポットライト 2.1: 女性や少女に対する暴力を削減するためにデータを活用

スポットライト 2.2 :公的目的データの改善における国際機関の役割

Chapter 3:民間部門の資源としてのデータ

データ主導型ビジネス・モデルを通じて価値を創造し,開発に関連する挑戦課題を解決

企業の生産工程におけるデータの役割

データ主導型の企業,およびその価値創造を後押しする技術

低・中所得国のプラットフォーム企業に焦点を合わせる

経済活動のためのデータ投入財

生産プロセスで使われているデータが開発にもたらすプラスのインパクト

生産工程におけるデータ利用は,諸産業部門をどのように転換しつつあるか

データ主導型企業がもたらす,政策で取り組むべき潜在的なリスクと悪い結果

参考文献

スポットライト 3.1 :オープンデータのビジネスへの応用は膨大な可能性を秘めている

Chapter 4:より一層の価値を引き出すためにデータを創造的に再利用

種類や出所が異なるデータの転用と組み合わせが有する力

データを転用することや組み合わせることからの新たな洞察

開発のために私的目的データを利用するに当たっての制約

データの革新に対する投資:データの文化を構築

参考文献

スポットライト 4.1: 低・中所得国から得られる天気や,水,気候に関する

より良いデータを収集し,共有し,そして利用する

スポットライト 4.2: 私的目的の交通データの転用によって道路を安全にする

PART Ⅱ データ統治を社会契約に適合させる

Chapter 5:データ・インフラ政策:貧困層や貧困国のために公平なアクセスを確保

不公平の原因としてのデータ・インフラ

貧困層を接続

貧困国を接続

結論と勧告

参考文献

スポットライト 5.1: 新型コロナウイルス感染症の世界的大流行は

妥当なデータ消費に関する期待をどのように再調整し,デジタル格差を露呈したか

スポットライト 5.2: データの炭素足跡

Chapter 6:データにかかわる政策,法律,および規則:信頼性のある環境を構築

データの安全装置およびイネーブラーに関する信頼の枠組み

信頼されるデータ利用のために安全装置を構築

データ共有のためにイネーブラーを整備

全体論的な法的枠組みを策定するための勧告

法および規制の枠組み強化のための成熟度モデル

参照文献

スポットライト 6.1: データに関する発展しつつある社会契約:新型コロナウイルス感染症をコントロールすべく接触追跡を円滑化するためにデータ共有とデータ保護のバランスをとる

スポットライト 6.2: 個人データの所有権を巡る論争

Chapter 7:データ経済の中で価値を創造する:競争,貿易,および税制の役割

競争,貿易,および課税を支援するためのデータ規則を考案

競争政策

貿易政策

租税政策

結論

参考文献

スポットライト 7.1: データ保護と競争政策の間のインターフェイスを理解する

スポットライト 7.2: データ統治に関連する課題への取り組みにおける

地域的および国際的な協力の役割

Chapter 8:データ統治の機関:共同での行動を通じて信頼を構築

開発のために諸機関はデータ統治をどのように支援できるか?

データのライフサイクルを通じたデータ管理

データ統治の機能

データ統治機能を実例の諸機関にマッピングする

データにかかわる仲介と協働

データ統治機関を有効にする

包容的なマルチステークホルダー統治を通じる持続可能な成果

成熟度モデルのレンズを通して諸機関の基盤を評価

参考文献

スポットライト 8.1:データに関する新しいグローバル・コンセンサスの必要性:行動の要請

スポットライト 8.2: アマゾン流域で市民科学を奨励

PART Ⅲ 統合国家データシステムに向けた動き

Chapter 9:統合国家データシステムの創設

統合国家データシステムに向けて

統合国家データシステムのビジョン

ビジョンを実現

参考文献

索引

著者紹介

世界銀行(Worlbank)

世界銀行ホームページ

訳者紹介

田村 勝省(たむら かつよし)

東京外国語大学および東京都立大学卒業.
旧東京銀行および関東学園大学教授を経て翻訳家.