更新日:2018/12/17
・ 序文、目次
世界銀行の『世界開発報告』(WDR)では毎年,グローバルな開発にとって中心的な重要性を有する話題を特集している.『世界開発報告2018 教育と学び――可能性を実現するために』は,そのすべてを教育問題に割いており,これはまったく初めてのことである.また,現在において教育をテーマとすることは時宜を得ている:教育は長らく人間の福祉にとって極めて重要であったが,経済および社会の変化が急激な時期にあってはなおさらのことである.子供たちや若者を将来に向けて備えさせる最善の方法は,彼らの学習(学び)を,教育を促進するあらゆる努力の中心に据えることである.
2018年の『 世界開発報告』は次の4つの主題を探求している:
第1に,教育が約束すること:教育は貧困を根絶し,繁栄の共有を促進するための強力な手段である.しかし,その潜在力を十分に発揮するためには,教育制度の内外両方においてより優れた政策が必要とされている.
第2に,学習に光を当てる必要がある:教育が普及したにもかかわらず,最近の学習評価から,世界中の多くの若者――とりわけ貧しい,あるいは不遇な人々――は,一生涯にわたって必要とされる基盤的スキルさえ身に付けずに学校に別れを告げていることが明らかになっている.このことと同時に,国際的に比較可能な学習評価が示すところでは,多くの中所得国のスキルは,これらの国が目標にしている諸国と比べて著しい後れを取っている.さらに,このような欠陥は,あまりにも多くの場合に表立っていない.それゆえ,この学習危機に対処するために第一歩を踏み出すにあたっては,生徒の学習をより適切に評価することによって現状に光を当てることが必須である.
第3に,全学習者のために学校を機能させるにはどうすればよいか:脳科学・教授法の革新・学校運営などの分野に関する研究によって,学習を促進する介入策が特定されてきている.このような介入策が学習の促進に結び付くためには,学習者の準備が整っていること,教員がスキルとモチベーションの両方をもっていること,そしてこれら以外の投入が教員と学習者の間の関係を支援すること,を確実に実施しなければならない.
第4に,学習に向けて制度を機能させるにはどのようにすればよいか:教育制度を通じて学習を達成するためには,有効な介入策の単なる規模拡大を超えるものが必要である.各国は技術的および政治的な障壁も克服しなければならない.この障壁には,利害関係者を動員し進展を追跡するために人目を引く指標を活用する,学習のための連合を構築する,そして改革にむけて適応的アプローチを採用することによって取り組む必要がある.