ジェネンテック 遺伝子工学企業の先駆者
更新日:2013/07/23
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・ 序文,目次
概要
ジェネンテックは1980年代に全く新しい産業部門をもたらし,その大成功は現在ではバイオテクノロジー産業の象徴となり伝説となっている.ジェネンテックは最初,科学や政治情勢など,どんな尺度から見ても様々な困難に出会うことが予想される,見込みのない企業だった.この会社はカリフォルニア大学サンフランシスコ校の微生物学教授だったハーバート・ボイヤーと失業中のベンチャー投資家だったロバート・スワンソンという2人の純真な起業家の,きわめて稀な先見の明のもとで1976年春に設立された.自由奔放でやる気のある科学者らが全く新しい組み換えDNA技術を応用して,ヒトインスリンや成長ホルモン,インターフェロンを作り出した.
設立してわずか4年でジェネンテックはウォール街の寵児となり,株式公開のときは取引開始後の嵐のような数分間で株価は35ドルから89ドルに急騰し3800万ドル以上の資金を調達した.これは株式市場の歴史上最大の収益となり,彼らは億万長者になった.本書は生物医学的な研究やビジネス文化の新しいモデルを考案した企業の,独創性にみちた勇気ある努力の数年間を詳細に追ったノンフィクションである.
目次
プロローグ
謝辞
第一章 組み換えDNA技術の発明
二人の科学者が出会うまで
共同研究
特許出願と政策
商品化に向けた展開
第二章 ジェネンテックの設立
ボブ・スワンソン
ジェネンテックの設立
法的及び政治的な障害
完全な事業計画
第三章 組み換え技術の証明
驚くべき実験
目標の変更
研究契約の交渉
ソマトスタチンの作成
さまざまな問題の出現
第四章 ヒトインスリン:ジェネンテックの成功
法人契約の模索
施設とスタッフの調達
ジェネンテックのヒトインスリン・プロジェクト
イーライ・リリーとの契約
広報活動と会社の拡大
第五章 ヒト成長ホルモン:商業的な未来を築くまで
ヒト成長ホルモンをめぐる競争
総合企業へ向けて
インスリンと成長ホルモンの生産規模の拡大
企業規模の拡大
新しい文化の誕生
第六章 ウォール街へのデビュー
バイオマニア
出口戦略を求めて
インターフェロン:新たな特効薬になるか?
初めての新規株式公開へ
法的な障害
新規株式公開
エピローグ
参考文献
原注
索引
著者紹介
サリー・スミス・ヒューズ(Sally Smith Hughes)
サリー・スミス・ヒューズは,カリフォルニア大学バークレー校バンクロフト図書館の科学史家.著書に『The Virus: A History of the Concept』がある.また,生物科学,生物医学,及びバイオテクノロジーに関する幅広く詳細な歴史的資料であるオーラルヒストリーの創設者でもある.
訳者紹介
千葉 啓恵(ちば ひろえ)
東北大学大学院農学研究科修士課程修了.化学会社研究所勤務を経て,現在は生物科学・自然科学関連の翻訳者.
主な訳書
『幹細胞WARS ――幹細胞の獲得と制御をめぐる国際競争』[共訳](一灯舍, 2009年)
『グローバル・フィーバー ――地球温暖化の症状と対応策』(同, 2010年)
『天災と人災 ――惨事を防ぐ効果的な予防策の経済学』(同, 2011年)
『ユダヤ人の成功と悲劇 ――資本主義と民族主義への対応』(同, 2012年)
『あなたの仕事も人生も一瞬で変える評判の科学』(中経出版, 2013年)