更新日:2020/11/20
グローバル・バリューチェーン(GVC)が1990年以降における国際貿易の急拡大を促進し,GVCは今や全貿易のほぼ半分を占めている.このような変化が前例のない経済的な収斂を可能にした.すなわち,貧困国は急成長して富裕国に追い付き始めた.
しかし,2008年のグローバル金融危機以降,貿易の伸びは停滞し,GVCの拡大も行き詰まっている.一方で,貿易主導型成長というモデルに対しては深刻な脅威が出現してきている.新しい技術は生産を消費者により近い位置に引き寄せ,労働需要を削減する可能性がある.また,大国間の対立はGVCの縮小ないし細分化につながりかねない.
本報告書では,GVCと貿易を通じて開発につながる道が依然としてあるのかどうかを検討する.その結論は次の通りである.すなわち,技術変化は,この段階では悪ではなく善である.GVCは引き続き成長を押し上げ,より良い仕事を生み出し,貧困を削減する.ただし,それが可能となるのは,途上国がGVC参加を促進すべくより深化された改革を実施し,先進国はオープンで予測可能な政策を追求し,そしてすべての国が多角的な協力を復興させる場合である.