更新日:2014/01/28
英文に登場する冠詞の頻度は全品詞中第一位であり,冠詞が伝える情報なしには英文の正確な理解と意味の伝達はあり得ない.にもかかわらず,日本語には英語の冠詞に相当する品詞がないため,軽視・無視されがちである.また学習も,従来事例の記憶と感覚を中心にして行われてきており冠詞が英文法の難題の一つとなっている.本書では,冠詞の全体的な構造,及び冠詞が修飾する名詞を新しい考え方で体系的に捉えることによって,冠詞の仕組みを説明している.また,冠詞を正しく決定するための手順と冠詞が持つ多岐にわたる用法を関連付け,冠詞の仕組みを理論的にわかりやすく解説している.本書は,英語を学習し,使用する学生や一般社会人の方にとって大いに参考になるであろう.
1.冠詞の用法分類に基づく冠詞の使い方の解説
冠詞には機能の大きく異なる使い方がある.従来は区別しないで説明されることが多く,理解することが容易ではなかった.本書では,機能の違いによって冠詞の用法を区分し,図表を使って構造的に解説しており,非常に理解しやすくなっている.また,冠詞の決定手順についても説明した.
2.冠詞用法の全体的に整合が取れた網羅的な説明
不定冠詞や定冠詞がつかない状態についても,“零冠詞” の考え方を使って,冠詞の用法を全体的に整合が取れた論理で説明を行い,冠詞の使い方の例外をできるだけ少なくなるようにした.
3.可算/ 不可算の合理的な考え方の提示
本書では,冠詞の決定に関係する可算/ 不可算が名詞と意味の組で決まることを示し,これに基づいて可算/ 不可算を正確に判定するための推測方法を説明した.従来の誤解が多い“可算名詞”,“不可算名詞”という用語の問題点を明らかにして,その対策を示した.
4.名詞の性質の表記とそれによる名詞の分類
冠詞の決定には,名詞の性質が関係する.本書では,名詞の性質を直感的にわかりやすくした表記法を提案し,この表記法に基づいて名詞を分類し,説明を行っている.
5.特定/ 不特定の判定法の明確化
特定/ 不特定の識別は,冠詞の最も重要な機能であるが,特定/ 不特定の持つ意味は,用法によって異なることを明示した.特に最も頻度の高い用法については,特定/ 不特定の判定に関係する状況を分類し,判定しやすくした.
6.固有名詞についての冠詞の推測方法の提案
固有名詞の冠詞についての推測方法を提案した.これによって学習負担が軽減できる.