連邦準備制度と金融危機 バーナンキFRB 理事会議長による大学生向け講義録
更新日:2012/06/30
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・ 目次,第一回講義(抜粋)
概要
この講義は,ジョージ・ワシントン大学ビジネススクールの前学部長であり,また,連邦準備の元理事でもあるスーザン・フィリップ氏が提案し,バーナンキ議長本人をはじめとする多くの関係者の協力によって実現した.連邦準備のような強力な組織は聴衆を圧倒してしまうのではないかと思われるが,バーナンキ議長がかつて教壇に立っていたこともあり,非常に刺激的な親しみのある四回の講義に結実した.現職のFRBの議長がFRBそのものについて講義をするというのは,異例である.しかしそれ故に,現実との関わりが深く,説得力のある講義になっている.各講義の終わりには生徒との質疑応答が収録されており,講義の雰囲気を感じ取ることができる.生徒の質問に対してバーナンキ議長は丁寧に回答しており,講義に対する議長の熱意が伝わってくる.日本でも今後現職のトップによるセミナーが期待される.
第一回講義 連邦準備制度の起源と任務:中央銀行とは何か.その役割と起源を説明し,その後,1930年代の大恐慌にどのように取り組んだかを説明する.
第二回講義 第二次大戦後の連邦準備:中央銀行の歴史,特に第二次大戦後の活動を回顧する.更に,最近起きた危機の形成,2008年及び2009年の危機の要因を解明する.
第三回講義 金融危機に対する連邦準備の対応:金融危機の緊迫時の状況,その原因と影響を説明し,更にその際に連邦準備や他の政策立案者が行った危機への対応を詳説する.
第四回講義 金融危機の余波:危機に続いて起こった不況,それに対する連邦準備の金融政策を述べる.更に,今回の危機が中央銀行の役割に与えた影響,中央銀行が果たす今後の役割など,中央銀行の将来を考察する.
9月16日に日本経済新聞で紹介されました。
目次
第一回講義 連邦準備制度の起源と任務
講義の内容と計画
中央銀行の任務と政策手段
中央銀行の起源
金融パニックとは
金融パニックと中央銀行の最後の貸し手機能
金本位制:制度と問題点
連邦準備制度の設立
大恐慌
大恐慌時の連邦準備の金融政策
ルーズベルトの政策
質疑応答
第二回講義 第二次大戦後の連邦準備
前回のまとめと本日の講義予定
第二次大戦の終結と連邦準備の独立性の獲得
マーチン議長:風に向かって立つ金融政策
バーンズ議長:インフレ期待の定着
ヴォルカー議長:インフレ期待を払拭した強力な引締め政策
グリーンスパン議長:グレート・モデレーション 71
住宅バブルの発生:借り手側の問題
住宅バブルと貸し手側の問題
連邦準備の金融政策が住宅バブルの原因の一つだろうか 96
危機の経済的影響
質疑応答
第三回講義 金融危機に対する連邦準備の対応
前回のまとめと本日の計画
公的部門の脆弱性
新種のモーゲージとその証券化の発達
二〇〇八年、及び二〇〇九年の金融パニック
金融危機に対する政策対応
ケース・スタディ:マネー・マーケット・ファンド
ケース・スタディ:ベア・スターンズとAIG
危機の経済的結末
質疑応答
第四回講義 金融危機の余波
これまでのまとめと本日の計画
連邦準備と財務省および海外当局との協力
伝統的金融政策
非伝統的な金融政策
金融政策に果たすコミュニケーションの役割
緩慢な景気回復プロセス
アメリカの潜在的な成長力は強い
金融規制改革
結び:危機から得た教訓
質疑応答
訳者あとがき
著者紹介
ベン・バーナンキ(Ben Bernanke)
1953 年12 月13 日生まれ.ハーバード大学で学士号を,MIT で博士号を取得した.かつてプリンストン大学,スタンフォード大学,ニューヨーク大学,またマサチューセッツ工科大学の教授会の一員であり,グッゲンハイム助成金とスローン助成金を得ている.計量経済学会とアメリカ芸術科学アカデミーの特別会員でもある.2006年に議長に就任し,現在は2期目を務めている.任命前にも理事会の理事,そして客員教授として,ユーヨーク連邦準備銀行の学術諮問会議メンバーといった役割で連邦準備制度と関連をもっていた.また,2005 年6 月から2006 年1 月まで大統領経済諮問委員会委員長を務めた.
訳者紹介
小谷野 俊夫(こやの としお)
学習院大学非常勤講師.
静岡県立大学名誉教授,元早稲田大学商学部非常勤講師,元明治大学商学部非常勤講師.
1969 年早稲田大学政治経済学部卒.1975 年ペンシルベニア大学ウォートンスクール修了(MBA).
第一勧銀調査部ニューヨーク駐在シニア・エコノミスト,DKB 総研経済調査部長を経て1997 年静岡県立大学教授(2012 年定年退職)
翻訳書に『アメリカの金融政策と金融市場』(東洋経済新報社,2000),『欧州中央銀行の金融政策』(東洋経済新報社,2002)いずれも立脇和夫博士との共訳がある.論文は「アメリカ連邦準備制度からみた欧州中央銀行」<田中素香・春井久志・藤田誠一編『欧州中央銀行の金融政策とユーロ』(2004)有斐閣の第3 章>,他多数