クリック・ワトソン・DNA:DNA 二重らせん構造発見への階梯
更新日:2020/12/13
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・ 日本語版によせて、訳者まえがき、目次
概要
「クリック・ワトソン・DNA」を巡る話はすでに数多くの書籍に書かれているが、ポール・ストラザーンによる本書は、DNAの重要な発見について、大事な点を損なうことなく、しかも、必ずしも科学を専門としない人にもわかるように、客観的、かつ、平易に書かれている、優れた本である。この翻訳本においては、クリックとワトソンの足取りと人間関係を追えるように、新たに巻末に地図と人物相関図を添えた。クリックとワトソンがDNA構造の解明に取り組んでいた当時の研究者のつながりを理解し、二人の足跡をたどることで、DNAの二重らせん構造発見のストーリーが、生きている人間の営みであったことを、より強く認識できるであろう。
湯水のように溢れかえる不確かな情報の中にいて、健全な科学的な視点をもち、正しく、かつ、慎み深く判断し、冷静に対応する態度こそ、今後の時代に強く求められるであろう。本書の英語版が出版されて以降も、この分野はめざましい発展を続けているが、この時代だからこそ、遺伝物質の本体であるDNA発見の普遍的な科学史を正しく知っていることは重要であり、原書の出版から二十年以上たった今日でも、本書の存在意義は大きいであろう。
2021年1月7日の日本経済新聞夕刊の書評欄(目利きが選ぶ3冊・評者:竹内薫)に掲載されました。
目次
日本語版によせて――原著者からの言葉
訳者まえがき
1 序文
2 DNAへの道:遺伝学の歴史
3 クリックとワトソン
4 あとがき
補遺Ⅰ 遺伝学:いくつかの事実、空想、失敗
補遺Ⅱ 科学史の年表
補遺Ⅲ 本書で言及されている主な都市
補遺Ⅳ 本書に登場する研究者の関係
さらなる読書のために
訳者あとがき
訳者あとがき 補遺
索引
著者紹介
ポール・ストラザーン(Paul Strathern)
1940 年ロンドン生まれ。ダブリンのトリニティ・カレッジで物理学・化学を学んだ後、哲学に転向。作家としてのキャリアも長く、小説、歴史書、旅行記など数々の著作がある。“A Season in Abyssinia”(邦訳『地獄の季節:ランボーが死んだ日』(講談社))で、1973 年にサマセット・モーム賞を受賞し、「90 分でわかる哲学者」シリーズはイギリスでベストセラーになった。
訳者紹介
田村 浩二(Koji Tamura)
1965 年茨城県生まれ。東京大学理学部物理学科卒業後、同大学院理学系研究科物理学専攻博士課程修了。博士(理学)。理化学研究所・研究員、米国スクリプス研究所・上級研究員等を経て、現在、東京理科大学・教授。生命の起源・遺伝暗号の起源を主な研究テーマにし、マット・リドレー著『フランシス・クリック:遺伝暗号を発見した男』(勁草書房)の訳書がある。