更新日:2019/09/11
日本では「タータン・チェック」として知られているタータンは、スコットランドの人々と文化の象徴であることはよく知られています。タータン・チェックは日本人にとっても馴染みが深く、デパートの包装紙や企業の商品、学校の制服などにも使われており、さらにここ数年は、特に秋から冬にかけてはタータンがあしらわれたストールやマフラー、上着を身に着けた人を多く見かけます。しかし、何世紀にもわたる盛衰を経て、生粋のスコットランド人だけでなく、世界じゅうに暮らす子孫にとって名誉のしるしとなったタータンの歴史はあまり知られていません。
本書で著者は、スコットランドの歴史だけでなく、国家の独立と文化的アイデンティティの確立を求めるスコットランドの苦闘にタータンがどのように巻き込まれていったのか、についても論じながら、このロマンあふれる織物の勇敢な歴史を、その発祥から、禁止令を経て、現代における商業や慈善活動での利用、行事や偉人の記念としての登録、そしてファッションの柄としての流行まで、関連のあるタータンに加えて、スコットランドの美しい自然やタータンの歴史を象徴する建物や絵画、資料の写真も豊富に掲載して説明しています。
本書は、スコットランドの運命を左右した主要な氏族から、忠誠や所属を表明するためにタータンを着用する現代の個人や団体に至るまで、古代の柄や現代の柄、伝統的な柄や由緒不明の柄、有名な柄や特異な柄を、400以上の柄見本とともに幅広く紹介する、過去に例をみないタータン事典となっています。事典とはいっても、特に前半は、タータンの歴史を見開きで説明しており、読み物としても楽しめる内容になっています。また後半の「タータン銘鑑」は、タータン(名)と関係の深い氏族について、その起こりや地域とのつながり、現代につながる家系などを詳しく解説しています。難しい言葉についての説明は訳注で補いました。マッキントッシュやケネディ、キャメロン、マクドナルド、アームストロングなど、日本でもよく耳にする姓も少なくなく、さらにタータンの柄と日本の家紋との類似性を知ることもでき、読者はタータンやスコットランドをより身近に感じるようになるに違いありません。
タータンの柄そのものに興味がある人だけでなく、スコットランドの文化や歴史、またファッション、美術史に興味のある人にとっても、魅力的な本となっています
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