マクミラン経済学者列伝 ジョーン・ロビンソン

更新日:2021/12/17

マクミラン経済学者列伝

ジョーン・ロビンソン

G. C. ハーコート/プリュー・ケール 著

小谷野 俊夫 訳

2021年12月 発行

定価 3,5000円+税

ISBN:978-4-907600-71-6

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・  目次、第2章(抜粋)、第4章(抜粋)

概要

ジョーン・ロビンソン(1903–1983)は,二十世紀の最も偉大な経済学者の一人であると一般的に考えられている.最初の著書である『不完全競争の経済学』で成功した後,彼女は関心と注意をケインズが当時行っていた研究に向けた.彼女は気心の知れた同僚から成るケインズ・サークルの一員であり,ケインズの『一般理論』がもたらした,さまざまな理論的可能性を探求した.

本書は,ジョーン・ロビンソンの総合的な研究書であり,彼女の知的な発展や主要な貢献,同時期に第一線で活躍していた経済学者との知的な交流を詳しく述べている.『一般理論』の形成に果たした彼女の役割や,マルクス経済学に共感しつつも批判的な関心を持ったこと,一九三〇年代と四〇年代に労働党の政策に果たした彼女の貢献,中国とインドの開発についての著作,そして主流派経済学の概念的基礎を批判する著作などが検討されている.ジョーン・ロビンソンの物語は,二十世紀におけるケンブリッジの経済学の物語と複雑に絡み合っている.経済学の受け止められ方や,創作方法,教育方法には大きな変化があったが,そうしたことも盛り込まれている.

本書は,ジョーン・ロビンソンの生涯と業績の物語に関心を持つ多くの人はもとより,ケインズ経済学やポスト・ケインズ経済学,マルクス経済学,それに経済開発を研究する人にとっても欠くことのできない一書である.

目次

序文

謝辞

略語

序章

第二章 『不完全競争の経済学』

第三章 『一般理論』発行の直前と直後におけるジョーン・ロビンソンとその仲間たち

第四章 ジョーン・ロビンソンの説くマルクス

四・一 序

四・二 マルクスに関するジョーン・ロビンソンとドッブのやり取り

四・三 カレツキとジョーン・ロビンソン:マルクスに関連して

四・四 『マルクス経済学』に対するケインズの反応

四・五 『マルクス経済学』の後

第五章 高尚な理論の時代におけるジョーン・ロビンソンと社会主義的計画

五・一 はじめに

五・二 市場構造

五・三 ケインズとカレツキ

五・四 計画

五・五 予算編成:「赤字財政は、政策の改革であり、革命ではない」

五・六 価格決定と分配

五・七 金融政策

五・八 失業の役割

五・九 国際収支

五・十 結論

第六章 『資本蓄積論』の発達過程

第七章 経済全体としての技術の選択と、資本理論に関する

    ケンブリッジ–ケンブリッジ論争:ジョーン・ロビンソンの役割

第八章 『資本蓄積論』後:防衛と発展

第九章 政治経済学としてみた開発経済学についてのジョーン・ロビンソンの見解

九・一 経済成長理論の延長としての経済開発

九・二 中国

第十章 『ロビンソン現代経済学』:消えゆく灯か

第十一章 関心を持ち続けた知識人の仕事:ジョーン・ロビンソンの一般向けの三冊の本

十一・一 『経済学の考え方』(1962b)

十一・二 『経済学の曲り角』(1966b)

十一・三 自由と必要性:『社会史入門』(1970)

十一・四 価値と科学

第十二章 結論:ジョーン・ロビンソンの遺産

訳者あとがき

索 引

原 注

参考文献

付録 ジョーン・ロビンソンの中国に関する著述

著者紹介

G. C. ハーコート(Geoffrey Colin Harcourt)

ポスト・ケインズ派の主要な学者.メルボルン大学で学んだ後,ケンブリッジ大学で博士号を取得し,オーストラリアにあるアデレード大学の教授に就任.その後,ケンブリッジ大学の准教授・フェローとして研究・教育に従事した.

プリュー・ケール(Prue Kerr)

ケンブリッジ大学の博士号を持つアデレード大学の教授であり,ポスト・ケインズ派の学者.

訳者紹介

小谷野 俊夫(こやの としお)

静岡県立大学名誉教授.
1969年早稲田大学政治経済学部卒.1975年ペンシルベニア大学ウォートンスクール修了(MBA).第一勧銀調査部ニューヨーク駐在シニア・エコノミスト,DKB総研経済調査部長を経て静岡県立大学教授.
翻訳書に『サミット――一九四四年ブレトンウッズ交渉の舞台裏』(2020),『マクミラン経済学者列伝 シュンペーター 社会および経済の発展理論』(2016),『学び直しケインズ経済学 現在の世界経済問題を考える』(2015),『マクミラン経済学者列伝 ケインズ』(2014),『マクミラン経済学者列伝アダム・スミス』(2014),『連邦準備制度と金融危機』(2012)いずれも一灯舎,共訳書に『ケインズ全集 第21巻: 世界恐慌と英米における諸政策 ― 1931~39年の諸活動』(2015),『欧州中央銀行の金融政策』(2002),『アメリカの金融政策と金融市場』(2000)いずれも東洋経済新報社がある.


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