更新日:2020/10/08
== 書評掲載 ==
戦後の国際金融体制を形作ったブレトンウッズ会議を…「人間ドラマ」として分析する。
…国際交渉の生々しい現場を明らかにしている。
…世界経済の運営を考える上で格好の参考文献となる。
――『日本経済新聞 この一冊』
…臨場感にあるれる読みやすい文章で描いている…。
…「舞台裏」を面白く読ませる工夫に満ちた筆力は出色の出来栄えであり、したがって戦後通貨体制の礎とされるブレトンウッズ会議を初心に帰って学び直す契機となるのにふさわしい文献である。
――『国際金融』
…歴史的背景から説き明かし、現代への教訓も提示した力作である。
…「あちらが金袋を持っているのは確かです。しかしこちらには頭脳があります」という英国貴族の発言は、両者の立ち位置を見事に表している。
…ブレトンウッズ会議への関心が再び高まっている現在、国際金融専門家による丁寧な翻訳と解説を得て本書が出版されたことを高く評価したい。
――『金融財政ビジネス』
本書は、1944年7月に第二次世界大戦後の国際的な金融・経済体制について話し合うために連合国によって行われたブレトンウッズ会議について、会議の開催にいたるまでの過程、会議が開催された約三週間、そして会議で確立された体制が実施に移されて以降の世界経済の変遷を描いたノンフィクションである。特に第Ⅱ部と第Ⅲ部は、会議の準備段階でブレトンウッズ体制が築かれていく過程や、会議の会場となったマウント・ワシントン・ホテルで参加者たちが繰り広げる様々な混乱や人間ドラマを臨場感をもって伝えている。本書で描写されている会議での各国の振る舞いやそこに見られる国柄は、現在の社会に関して多くを物語っている。ブレトンウッズ会議によって誕生した世界銀行と国際通貨基金が設立される過程やその目的も様々なエピソードを交えて描かれている。また、準備段階を含め会議全体にわたって主役を演じたケインズとホワイトについては、著者は二人を対比させながら、その生涯を追っている。
ケインズが晩餐会で述べているように、各国が協力して共通の目標に向かって取り組み、新しい体制を築いたブレトンウッズ会議は、国際的な協働の実現であるとも言える。二十世紀から二十一世紀にかけての金融・経済史だけでなく、国際的な協働の象徴としてのブレトンウッズ会議の意義も示している本書は、貿易戦争やナショナリズムの台頭が見られる状況下、さらに気候変動や環境問題、天然資源、疫病、サイバーテロへの対応において国際協調が求められている今日において、よりいっそう示唆に富む一冊となっている。
2020年10月15日、国際通貨基金 専務理事 クリスタリナ・ゲオルギエバ氏は、「ブレトンウッズの時、再び(A New Bretton Woods Moment)
」と題する講演を行いました。新型コロナや、貿易戦争、領土問題、人種の問題、そして気候変動への対応など、国際的な協調が求められている今日、「ブレトンウッズ会議」の意義に改めて注目が集まっています。
2021年1月16日付の日本経済新聞の読書欄で、「この一冊」として、本書が取り上げられました。